過日、蝿の王の巣から戻った際に決裂して以降、もう気にする必要はないと割り切った恩であるが――正直なところ、気にはなっていたのだ。督促とくそくのない借金のように。 だから、この機会に返してしまおうと、そんな気になった。 もちろん、バカ正直にラーズをスキム山まで連れて行くつもりはない。 そもそも、今のラーズではワイバーンの飛行に耐えられないだろう。なんだかんだで、クラウ・ソラスに乗っているだけでもけっこう体力を消耗するのである。 だから、スキム山に向かうのは俺ひとり。その点、ラーズは不本意だろうが、今のラーズの目的はグリフォン退治ではなくミロスラフの救出だ。無事にミロスラフを連れて帰れば文句はあるまい。 というか、文句があっても聞く耳もたん。 ついでに向こうでミロスラフの本音を聞きだし、今後の関係も明確にしてしまおう。 そんなことを考えながら、俺はゆっくりと口を開いた。