「本当にお前は堪え性がないな」「はぁっはぁ、し、仕方ないでしょう…!はぁっ、足の裏、弱いんだから…っ!お願いだからもうやめて…!」「ならば少し休憩をしよう」 敵はあっさりと紫依里の要求を受け入れる。紫依里は驚いたが内心ホッとし、敵の機嫌を損なわないよう口を閉じた。 しかし、ピリピリとした感触が未だ足の裏に残っており、時間が経つにつれてそれは肥大化していく。「……っ、?」 その感覚が一体何なのか、紫依里は判別に時間が掛かった。足の裏がむずむずと疼き、それは耐えられない程に強くなっていく。「(足の裏が、痒い…!?)」 それも尋常ではない痒さで、紫依里は思わず足枷から足を引っこ抜こうと激しく動かした。恐らく、先程刷毛に浸していた溶液の所為なのだろう。アレが痒みを与えているに違いなかった。「かっ、痒い…っ!!」 経験したことのない痒さに紫依里は苦しむ。ガチャガチャと足枷を鳴らすが、痒さが紛れる事はない。「くうぅ…っ!かゆいっ、かゆいぃぃ!!」 むずむず、じんじんと疼く足の裏をどうにかすることは出来ない。ただただ紫依里は痒さに侵され、拘束された範囲内で暴れるしかなかった。そんな様子を見て、敵は満足そうにニヤリと口角を上げる。「いやっいや、だめ!おねがっ掻いて…!」「痒いなら掻いてやりたいところだが、他人に掻かれてもくすぐったいだけだろう」「なっ……!」 恐らく敵が言いたいのは、くすぐったさか痒みか、どちらかを選べという事だろう。先程まで散々弱点をくすぐられて消耗している紫依里にとっては、辛い選択だった。「(でも、こんなの…我慢できない…っ!)」 足の裏がジンジンと警告を発するように痒みを主張する。他人に掻かれるのはくすぐったいと理解しているものの、今の紫依里は痒さから逃れることしか考えられなかった。「…っ!それでもいいっ!それでもいいから掻いて…!!」「本当に堪え性がないな」 敵は呆れたように、しかし作戦通りだと言うような声色を発しながら、たくさんの突起が付いた大き目のヘアブラシを手に取った。それを見た紫依里はサッと血の気が引く。