「こら、陸。自分の荷物をちゃんと中に入れなさい」 「天にぃすごいねー!とってもいい部屋!ベッドもふかふかだー!」 「あっ!陸!ベッドにダイブしない!埃が立つでしょう」ぼふぼふとベッドの上に座りその感触を楽しむ陸に天は困った顔を浮かべながら2人分の荷物を部屋に入れ、テキパキと荷解きを始めた。 しばらくしてだいたいの荷解きが終わると扉がノックされた。「・・・誰?」 「和泉一織です」 「どうぞ」 「失礼します。お疲れかと思いましたので、よろしければこちら召し上がってください」部屋に入って来た一織は奥の丸テーブルに持っていた盆を置いた。 乗っていたのは2人分の紅茶と小さなチョコレート。「わあ!!ありがとう一織!美味しそう!」 「ありがとう。このチョコレートも三月さんが?」 「ええ、兄さんが作ったものです。夕飯は何時ごろ召し上がりますか?」 「陽が沈んだころに下に降りようかと思ってる。陸、それまでお腹平気?」 「うん!大丈夫だよ!」 「・・・随分と可愛らしい」 「なに?」 「いえ、なんでもありません。それでは夕飯を作ってお待ちしています」一織がそそくさと部屋を出て行った。 天はしばらくじとりと扉を見つめていたが、後ろから陸の「おいしー!天にぃこれ美味しいよ!」という声で視線を陸へと戻した。