雅紀がやることにはソツがなさすぎて、明仁も由矩も感心するというよりはむしろ内心のため息が止まらない。 (どうして慶輔みたいなクズからこんな出来過ぎの息子が生まれるのか......。不思議でたまらんよ、俺は)由矩はつくづくそれを思い。 (格の違いってやつかな。慶輔が才気煥発な自分の息子に嫉妬したくなる気持ちもわかるような気がするよ)明仁はしみじみと実感した。 年に数回会うだけの自分たちと違って、日常的に息子の成長を見せつけられている慶輔にしてみれば、それはまさに嫉妬に苛まれる毎日だったのかもしれない。それを自覚した時点 で、慶輔の負けは決まってしまったようなものだろう。結婚もしていない、子どももいない 自分がそれを口にするのもおこがましいかもしれないが。生命保険金を兄妹弟四人で均等に配分することに合意したところで。 「それで、これは雅紀とも話し合ったことなんですがね」 明仁は改めて由矩を見やった。 ......何を? その視線に促されて、明仁は少しだけ重い口を開いた。 「例の、真山千里の妹のことで......」 とたん、由布の顔付きが険しくなった。まるで、その名前が禁句であるかのように。慶輔の生命保険の話が出所が瑞希であることは雅紀から聞いてはいるものの、由布としても好んで聞きたい名前ではない。