その後も、定期的に女の人は現れた。一人で寝ているとき、 病院のベッドでぼうっと外を見ているとき……女の人が現れると、決まって周りの空気が冷たくなる。ひやっとして、ぞっとする。そっと現れた女の人は、陸のことをじっと部屋のすみから見つめているのだ。「…そんなに見てたら、穴があいちゃうよ」ある日、とうとう陸は耐えられずに、そう声をかけてみた。すうっと、女の人が近寄ってくる。「りくをもらって、どうするの?」当然のことなの、わたしの息子だもの…「りくが、お姉さんの息子なの?」そうよ「陸、お母さん二人もいるんだね!」陸がそう笑うと、女も優しく微笑んだ気がした。 その時、はじめて顔がはっきりと見えた。きれいな人だった。「えへへ、ちょっと天にぃに似てるから、どきどきしちゃうな」私がこわくないの?「優しいもん」あなたを連れていくんだよ「へへ…お姉さんに連れていかれる前から、なんども死んじゃうかと思ったことあるし。きっと陸は病気で早く死んじゃうから…お母さん達には、天にぃがいるから」女と、目が合う。「陸を連れて行っていいから、皆が幸せになれるように、見守っていてあげてくれる?」