エッダは身振りでか弱い女性を演じるが、エッダの正体を知っているジョゼフやモーフィスは白けた態度である。モーフィスが「ふんっ」と鼻で笑うと、エッダがさり気なくモーフィスの頭髪を引き抜く。「ぬおっ!? な、なにをするんじゃ!」「あら? なんのことでしょうか」「痴話喧嘩はそのくらいにして、先に進もうぜ」「だ、誰と誰が痴話喧嘩じゃっ!!」「まあ、そんな風に見えましたか」 ぎゃーぎゃー喚くモーフィスを置いて、ジョゼフは足を進める。「待たんか。気になる情報を耳にした」「なんだ? お前の頭が禿げる呪いでも耳にしたのか」「それは面白い情報だわ」「つまらん冗談を言うな。お前にも関係することじゃ」「俺に?」「『天下五剣』を目撃した者がいる」「そりゃ見間違いだろ。俺と殺り合ったとき、すでによぼよぼの爺さんだったんだぞ」「いいや見間違いなどではない。背に三本の刀・を身に着けておったそうじゃからな」「三本? 俺の記憶が確かなら十本だったぞ」「五本じゃバカタレっ! それだけでない。見た目は老人などではなく三十代半ばだったそうじゃ」「若者じゃねえかっ」「ふざけておる場合かっ!」「耳元で大声出すなよ。本人じゃなく息子か孫じゃねえのか?」