桃は両刃の長剣を正面に構え、軽快なフットワークで敵の集団の中をすりぬけながら舞うよに白刃を振るう。敵はその動きについてこれず、無理やりに攻撃しては味方同士で相討ちをしていた。 一方で仁は、片刃の双剣を両手に持ち、乱暴に振り回して迫る敵を凪ぎ払っている。桃のように派手に動きはしないが、その刃の届く範囲に入った敵は風に煽られた木の葉のように吹き飛ばされていた。ゆっくりと足を踏み出して迫りくる様は、敵の目には竜巻のような驚異に写っていることだろう。 残りの仲間達の到着を待つまでもなく、雑兵の軍団は二人の手だけで片付いた。 「っしゃあ、あとはあいつだけだ!」 ゴルゴンに視線を向け、仁が吼える。 「うんっ! 一気にやっつけちゃおう!」 二人は不敵に腕を組んで立っているゴルゴンに並んで迫った。しかし、二人の攻撃が届く前に、ゴルゴンが迫る二人に向けて手を翳し、稲妻のような光線を放ってきた。直撃を受け、二人は吹き飛ばされる。 「ぐわああぁぁッ!」 「きゃああぁぁっ!」 倒れる二人。スーツの表面が黒く焦げて煙をあげている。ゴルゴンは高笑いを上げていた。 「うふふふ、わたくしを雑兵共と同じと思ってもらっては困りますわよ。あなた達なんか、もとより一人で十分ですの」 ゴルゴンの言葉に桃は歯噛みする。確かに高い実力を持っているようだ。二人バラバラに動いていたって勝ち目はなさそうである。仁もそれを痛感しているようで、悔しげに口の端を歪めていた。 「仁、どうしよう?」 「コンビネーションだ。こっちは二人の力を合わせて奴に対抗するぞ!」 「うんっ、分かった! 私達の結束力、見せてあげよう!」 「じゃあ俺が突っ込むから、援護は任せたぜ!」 「うんっ! ……へ?」 仁が勢いよく立ち上がり、雄叫びを上げてゴルゴンに向かって突貫していく。それを桃は狼狽えて見ている。ゴルゴンの手が閃光を放った。仁はそれを意に介さず真っ直ぐ突っ込み、「どわあぁぁぁぁッ!?」その直撃を受けて吹き飛ばされた。ゴムボールのように地面を二、三度バウンド。ずさーっと滑るようにして、桃の足元に舞い戻ってくる。 「じ、仁、大丈夫!?」 「も、桃……てめ、援護はどうした!?」 「だ、だってぇ! いきなり援護とか言われても分かんないよぉ!」 泣き言を漏らす桃。 前衛と後衛に別れてのコンビネーションはシュバリエイターの基本戦術である。近接武器を持つ前衛が敵に白兵戦を挑み、後衛が遠距離攻撃でそれをサポートする。単純であるがこの戦法で激昂戦隊は今まで数多くの敵を倒してきた。いわば必勝のパターンである。 惜しむらくは、今この場に後衛を行える者がいなかったことだ。 仁も桃もバリバリ押せ押せの近接担当である。後衛など訓練ですらやったことがない。それを実戦でいきなりやれと言われても、ほいほい出来るものではなかった。 「あーもう、周達がやってるみたく、後ろから適当に飛び道具撃ってりゃいいんだよ! 分かったな? もっかい行くぞ!」 「えー、うん……」 後衛の仕事を舐めきった発言とともに仁は立ち上がり、再び突進する姿勢を取る。桃は自信無げに頷いてその場で剣を構える。