「お邪魔します」九条と陸を呼ぶように話があった数日後。 天は実際に陸を連れて家に帰った。 陸は招待されたことに驚きつつも、天の家までやってきていた。「九条さん。この人が、七瀬陸。ボクの友達です」 「は、初めまして!天にぃ――じゃなかった!天、さんには日頃からお世話になっていて――」 「陸。緊張しすぎ」 「だって天にぃのご家族の方なら、しっかり挨拶しなきゃって思って…!」 「ははは。陸君だったね。そんなに緊張せずとも大丈夫だよ。天といつも仲良くしてくれてありがとう。天のことは天にぃと君はいつも呼んでいるのかい?」 「は、はい!天にぃ、お兄ちゃんみたいだったから…」 「そうか。君たちは年が離れているのかい?」 「いえ!それが全く同じ生年月日だったんです。でも天にぃはすごく大人びているから、同い年には思えなくて…」 「そう?」 「うん!でも天にぃってたまにすごく子供っぽいことするよね。最近気づいた」 「…何それ?ボクのどんなところが子供だって言うわけ?」 「ふふっ。内緒」陸はいたずらっ子のような顔で天の見てニシシと笑い、それを見て天も少し笑った。 するとその様子を見ていた理が驚いたような顔をしてから、ふっと表情を崩した。「天お兄ちゃん、すごく楽しそう」 「…そうかな?」 「うんっ!お友達さんと、本当に仲が良いんですね」 「うん!俺たち仲良しだから!…天にぃの妹さんかな?」 「そうだよ。ボクの妹の理」 「理、ちゃん…?」理という名前を聞いて、陸は少し驚いた顔をした。「陸。どうかした?」 「ううん。何でもない。理ちゃんがメンバーにそっくりだったから、少し驚いていただけ」陸は理がすごく環に似ているような感じがした。 しかも環が探していた妹の名前は理だとも聞いていた。 これは偶然にしては出来過ぎていないだろうか。 でも、天の家族なのだから環とは関係ないはず。陸はそう結論づけて考えることを止めた。「理ちゃん。よろしくね」 「はい!よろしくお願いします。陸さん」 「ははっ。理。陸君は天のことを天にぃと呼んでいるんだ。どうだろう。理と陸君も仲良くなるために陸君のことをお兄ちゃんと呼んでみたら」 「え…?」 「九条さん…?」天と理は九条の提案に少し戸惑った。 二人の知る九条鷹匡という人間は、そんなことを気にする人間には思えなかったからだ。 まるで理に陸のことをお兄ちゃんと呼ばせようと誘導しているような…。「あぁ、良いですね!俺、施設では年下の子にそう呼ばれてたから懐かしいかも」そうとは知らずに天は九条の提案を快く受け入れた。 自分の恩人である九条の提案であり、その相手である陸が受け入れるのであれば、理には反対する理由はなかった。「り、陸お兄ちゃん。よろしくお願いします」 「こちらこそよろしくね!理ちゃん!」理は少し慣れない様子で陸お兄ちゃんと呼ぶ。 理の気持ちを察した陸は、理を気遣うように笑顔で答えた。「陸君はずっと、施設に居たのかい?」 「…はい。高校を卒業するまではずっと施設で育ったので」 「そうかそうか…。まさかこんな偶然があるとはね…」 「!?」