「なぁ、天と陸は双子・・・なんだよな?」 「なんでそんな今更なことを聞くの?」 「双子だよ!三月には最初に言ったと思うけど・・・」午後からの講義が天も陸もなかったので和泉家が経営する『fonte chocolat』に訪れて、ケーキを食べていると三月が深刻な顔をして二人のことを双子なのかと問いかけてきた。だが、双子であるということは初めて会った時に言っているので当然三月も知っているはずなのにどうしてそんなことを聞くのかと眉を寄せる天とキョトンと首を傾げる陸に三月は悪い悪いと笑って訳を話す。「いやな、この前来た女性のお客さんに言われたんだよ。あの二人は恋人ですか?って。違います、双子の兄妹ですよって言うとそうなんですかと何でか嬉しそうにされたけど、そん時はそれで終わったんだ。だけど、その数日後に同じ人が来てさ、あれは双子の兄妹じゃない、あんなの許されない!なんて一方的に罵られてさ、何のことだと聞こうにもその人は捲したてるだけたてて店から出てったし、それから来なくなったから分からないんだけど、そんなことあったから一応確認がてらに聞いてみたんだよ。」 「ふぅん。随分と失礼な客だね。」 「ひどい・・・オレと天にぃはちゃんと双子なのに・・・」天は顔を顰め、陸は天と双子であることを否定されたのにショックを受けて目に涙を浮かべる。そんな二人の様子に三月はそうだよな、兄妹ってことを否定されたもんだもんなと同情する。三月も一織とあまり似ていないことから姉妹じゃないと否定されることがあるから陸の気持ちも分かるのだ。よしよしと陸の頭を撫でながら慰めているといつのまにか三月の足元にはケーキの乗ったお皿を両手で持って陸に差し出している一織がいた。「ななせさん、げんきだしてください。」 「一織・・・?これ、オレにくれるの?」 「ねえさんのつくったケーキはげんきがでます。・・・わたしは、わらってる・・・ななせさんのほうが、いいですから・・・」最後は恥ずかしさで俯いてしまった一織だが、その思いは十分陸に伝わっている。ありがとうとケーキを受け取ってから一織をギュッと抱きしめる。しかたないひとですね、と口では言っているが凄く嬉しそうに陸に抱きついている一織に天と三月は小さく笑う。「あのーすっごいほのぼのしてるとこ悪いんだけどさ、皆さんおにーさんのこと忘れてない?」 「にかいどうさんまだいたんですか。はやくかえったほうがいいですよ。」 「イチ辛辣!!怒ってんの!?」 「今度は何をしたの大和」 「今度は!?俺ほとんど何にもしてねーから!?冤罪!冤罪だから!」