「…陸の、お願いなら、聞くしかないね」天は声を震わせて、そう呟きながら陸を強く抱き寄せる。そんな天に、陸はふふっと笑いながらまた涙を零した。暫く抱き締めあって、泣きあって。互いの鼻を啜る音だけが響いていた中、陸はやがてゆっくりと天から離れていくと、再び日記帳を手に取って、それを天に差し出した。「天にぃ、まだ、あと1ページだけあるんだ」 「え…」陸の言葉に、赤く充血させた目を見開いて、天は日記帳に視線を落とす。「読んで。…あのね、天にぃ。天にぃの隣で歌い続けるっていうオレの夢は叶わなかったけど……確かに、天にぃがいたから、オレは最高の仲間と出会って、素敵なファンに恵まれて、天にぃと再会して。小さい頃には考えられなかった、最高の夢を手に出来たんだよ」 「陸…?」 「オレの始まりは、全部、いつだって、あなたなんだよ」陸に手渡されて、戸惑いながらも天は日記帳を両手に持つと、次のページをぱらりと捲った。前のページの、少し弱々しい字と違って、陸がサインを書く時のような、ファンに向けてメッセージを書く時のような、力強い字がそこには書かれている。