七瀬…天!?ボクと同じ顔、同じ身長で名前まで同じ。そんな彼の名字はボクにとっては懐かしい七瀬だった。 どういうことだろうか。「えっ、やっぱり天にぃなんだ!?」と驚きの声を上げてる陸は、七瀬天を天にぃと呼んでいた。 つまり…ここはボクがいた世界とは違うということなのか。いや、そんなことがあるはずない。昔、主人公がタイムスリップする話の本を陸に読み聞かせてたことがあるが、まさか現実で起こるなんて有り得ない。でも目の前にいる二人は正しく七瀬天と七瀬陸だ。ボクと陸のそっくりさんがそこにいるわけではないことだけは分かる。 とりあえず仕事が終わったら話そうということでその場は纏まった。ボクは何処にいようか迷ったが、楽屋が安全なんじゃないかと思い、そこに留まることにした。同じ人物が二人いればスタッフさんも混乱させてしまうと思ったから。 だけど楽屋にノックして入ってきた二人のマネージャーらしき人物はボクを見ても「二人の知り合いか?」と言うだけで、深く追求はされなかった。もしかしたら、ボクと七瀬天が同じ人物だと認識してるのはボクたち三人だけなのかもしれない。それを確かめるためにも七瀬天に見学させてと頼んだ。七瀬天は分かったと承諾してくれた。彼らのマネージャーには親戚であることにした。面識ない人が急に現れたとなれば追い出されてしまうかもしれないから。 スタジオの隅っこで二人の仕事を見学する。今日は音楽番組の収録のようで司会者の合図とともに進行していく。