ステータスを一通り確認したヴァンダルーは、【死霊魔術】から覚醒した上位スキル、【神霊魔術】について考えながら部屋を出た。(神霊……つまり、神の如くランクの高い霊という事かな? 神も魂だけ、ゴーストも魂だけ。なら、ランク13以上のゴーストは、神に似ているとか) 名称の理由はそんなところだろう。実際には加護を与えられるか否か等、色々な違いがある。しかし、似て非なる存在でも、似ているのは確かだ。「まあ、死霊魔術がそのままストレートに強くなったスキルと考えましょう。では、母さん達が倒した英霊の魂の回収をよろしくお願いします」『畏まりました!』 そして荷台からヴァンダルーが降りると、サム達は異空間を走って行った。「では、俺達はもうしばらくここで……怪我の治療をしているふりでもしましょうか。とりあえず、俺は【ゴーレム創成】スキルでポーションの空き瓶を作っておきましょう」 遠目に見ても激戦に見える戦いの直後だ。平気な顔をして自力で戻って来るよりも、色々理由を付けてアリバイを作っておいた方が良いだろう。「飲んだように見せかける為だけに、無から陶器の瓶を創りだすなんて、なんだかスキルの無駄遣いに思えるわね」「じゃあ、私は偶然巨人の下敷きにならずに済んだけれど、衝撃で気絶してしまってついさっき目を覚ました演技でもしようかしら?」「細かい設定ですね~。それより、姿を見せちゃったオルビアさんや、ドラゴンやジャイアントのゾンビはどうするんですか?」「……ドラゴンやジャイアントは、俺が毒を盛って混乱させた事になっているそうです。一度森に潜ませて、後で回収します。どうせ暫く立ち入り禁止でしょうから。 オルビアは……俺と母さんの出身という事になっているダークエルフの隠れ里の大長老が、前もってかけておいた精霊魔術の奥義という事にしましょう」「だ、大長老?」「ええ、大長老」 何と無くだが、そう言えば納得させられそうな説得力が、大長老と言う呼称にはある気がするヴァンダルーである。「……それ、多分あたしの出身地でもありますよね~。口裏を合わせないと」 メリッサと違い、肌の色を白に変化できないカナコがそう言いながら、何度も大長老と繰り返し呟いている。 その彼女の後ろから、ダグが困ったような顔つきでヴァンダルーに訪ねた。「なあ、それよりも、これはいつ受け取ってくれるんだ?」 彼の横には、ヴァンダルーが自ら切断した腕が浮いていた。