この時間なら、今からお父様に迎えに来てもらえば夜のうちに栃木の城まで行けるはずだ。三十年間で増えすぎた私物はどれもロナルド君との思い出が詰まっていて、持って行く気にはなれなかった。君に新しい恋人ができた暁には、全部処分してくれたまえ。半分砂になりながらも、お父様に連絡をしようと何とか腕を復活させて再度スマホのRiNEを立ち上げたところで、ロナルド君からのメッセージがポンッと画面に表示された。『お前がいないと寂しい。会いたい』メッセージに、私の目は釘付けになる。ああ、寂しい。さっき私が感じたのと同じ気持ちだ。その瞬間、唐突に、記事から読み取れる情報の中に僅かな可能性が残っていることに気が付いた。私は、その可能性に賭けてみることにした。