宗助が半身をズラして、声の主を招き入れる。 扉を閉めながら楽屋の中に入って来たのは、黒のキャップを目深に被り、眼鏡で顔を隠してはいるものの、見るものが見れば一目で顔立ちの良さが解る若者だった。 お邪魔いたします、と礼儀正しく頭を下げる仕草はどことなく優雅で、自然と人目を惹く存在感がある。「……社長が暴走する理由、わからないでもないね…」 「暴走とは何だ!この逸材を逃す訳には行かないんだぞ!」 「陸を見つけた時以来の張り切りようだな…」 「当然だ、楽!」 「いや、威張るところじゃねーし…ったく…」 「あの…」 楽が舌打ちしたところで、招かれた客が首を傾げながら声を挟んだ。 その仕草に既視感を感じるのは、気のせいか。 楽、龍、姉鷺、そして宗助は、本人たちの気づかぬところで、共通の思いを持つ。 けれど。