「何があったんだよ。さっきまで寝てただろ?」 「ふぇぇ...にぃにいなくて...」 「どこいってたの...」 「どこって、洗面所...」 「ぃや!おいてっちゃや!」 「なんでおいてくの!」 「えぇ...」理不尽な怒りにどういうことだよと困惑した声を漏らした楽だったが、置いていかれたことに対して強く反応していることに気づくと自身の行為が迂闊だったと知る。父親にも母親にも置いていかれた双子にとって例え近いところであっても楽の姿が見えないことは一つの恐怖だ。ましてや寝て起きたら側にいないのだからひとしおだ。「悪かった。お前らにとったら誰もいないのは怖いんだよな。」小さく震える双子を安心させるように背中を撫でてやり、落ち着くまでは動かないつもりでベッドに腰掛ける。まだ会ってから一日すら経っていないのにこれほどまでに楽を頼りにしてくれていることに嬉しさを感じる反面、初対面の相手だといういのに誰にでもこんな風に懐くのかと心配にもなる。だが、そこまで考えて楽は双子との面識はなかったというか存在すら知らなかったのだが、双子の方は楽を知っていたのだ。初対面だと思っているのは楽だけだと気づくと何となく仲間外れにされたような気がして納得がいかない。「天と陸はいつから俺のこと知ってたんだ?」 「ふぇ?」 「なんで?」 「いや、俺はお前らのこと昨日知ったけどよ、お前らは俺のこと知ってるだろ?ただ純粋にいつから俺のことを知っていたのか気になっただけだ。」