「助けはしない。助けはしないが、とりあえずここから一番近い町……には公爵家の連中がいそうだな。だから二番目に近い交易都市、モークシーの町の冒険者ギルドまでは運んでやる。後は娼婦になるなり、こいつの腹の中のミノタウロスの子供をテイマーギルドに売るなり、奴隷になるなりして生きていけ」 ユリアーナの体内に産み付けられたミノタウロスの卵は、ランドルフが【魔王の卵管】を封印した事で成長のスピードが落ちていた。それでも通常のミノタウロスよりは速いし、卵が幾つ入っているか分からないが、町に着くまでの間に生まれる事は無いだろう。 テイマーギルドも何匹もミノタウロスをテイムは出来ないだろうが、ランク5の魔物の産まれたばかりの子供だ。一匹一万バウム以上で買い取ってくれるだろう。「み、見逃してくれるのか!?」「……単に放り捨てるだけだ。それとこいつはお前とは別口で捕まった旅人か冒険者の女だ。少しでも長生きしたいなら、そう言う事にしておけ」「わ、分かった!」 ランドルフはそう言いながらアイテムボックスから再び布を出してユリアーナの身体を包んだ。「じゃあ、一旦魔境の外まで【転移】する。その後、モークシーの町まで送って、適当な冒険者にお前等を任せる。後は俺は知らない。以上だ。 後は精々、俺とは違うお人好しに出会うよう祈れ」「ああ、それで十分……わっ!?」 ナターニャが言い終るのを待たずに、ランドルフはあらかじめ決められた場所に【転移】する事が出来るマジックアイテムを起動して、三人でミノタウロスの巣から去ったのだった。