電気を消してからもう何時間経っただろうか。一向にやってこない眠気に、天は何度目かわからないため息をこぼした。 明日の仕事の為にも眠れる時にしっかり寝ておかないといけない。 デビューからもうすぐ5年、自分も当時1番の年上だった龍ノ介と同じ年齢になった。 TRIGGERの人気は衰えることはなく、さらに忙しく過密化していくスケジュール。 アイドルとして幸せなことだと思う。 ファンのみんなを楽しませたい、その気持ちはデビューしてからも、今もこれからも変わらない。変わったのは………「…仕方ないか」そう独り言を呟くと、手元のリモコンで小さな電気を1つつけて起き上がり、リビングのテービルにロックグラスとウイスキーを用意する。 グラスの中でゆらゆらと揺れる黄金色の液体を喉に流すと、一瞬喉の奥が熱くなる。 頭も身体も軽くなったような気がする。「……今日こそは飲まないで寝れると思ったんだけどな………」手足が震えるとか、アルコールを求めて暴れるとか、そういった類のものではない。 けれど、依存しているなと天は自笑する。 きっかけはわからないが、次第に、本当に少しずつこうなってしまった。 最近はアルコールの力を借りて、少しだけ酔わないと眠ることができない。 お酒に逃げてる…そう思うと罪悪感さえ感じてしまっていた。 キッチンには大量の空いた瓶や缶。 次のゴミの日には捨てないと… こんな短期間でこんなに飲んだのかと、天は冷たく足元を見つめる。僕はどうやって眠っていたんだっけ? 眠りは幸せであたたかくて優しいものだったはずなのに。そんな思いを巡らせれば、脳裏に浮かぶのは、愛おしい弟の笑顔だった。「陸……」そう呟くと、天はグラスに残ったウイスキーを一気に煽り、再びベッドへと戻った