時の流れは残酷な現実を突きつける。ボクの心は「あの日」から氷の様に凍ったままだった。溶かす事なんて、もう2度と出来ないのだろう。こんな思いをするのは、もう沢山なんだ「お気の毒にねぇ・・・」 「猫を庇って・・・」 「青信号なのに大型トラックが突っ込んできたそうよ」 「ひき逃げにあったって」 「助けた猫は助かったらしいわ」 「まだ14歳なのに」 「ご両親も居ないんでしょう?」 「じゃあ引き取り先は誰が・・・・」「あの日」は大雨だった。 土砂降りの中、黒ずくめの集団からはすすり泣く声と哀れむ声が聞こえる。いや、地面に打ちつけられた雨がそう聞こえたのかもしれない。 だけど今となってはそんなことどうでも良い。 ボクはもう抜け殻となったのだから。「天君、風邪引いちゃうわ」親戚の叔母さんがそう言って傘を差し出すと、ボクは言った。「要らないです、叔母さんは先に戻ってて良いですから」 「天君・・・もう行きましょう、こんなに思ってもらえるなら、あの子もきっと安らかに天国へ・・・」その言葉を聞いた瞬間、ボクの中で何かが割れる音がした「放っておいてよ!!!!」叔母さんが差し出した傘を払いのけるように怒鳴った。「叔母さんにあの子の何が分かるんだ!!!!!!!何が安らかにだ・・・・!!!あの子は、陸は・・・・・・・・・」ボクのせいで、死んだのに「・・・・・・・・・ごめんね・・・・・・ごめんね・・・・・陸」もし、奇跡があるとしたら一つだけ、願いが叶うならもう一度、だけ