もう動けない。天は傷を押さえながら暗がりでうずくまる。額にはびっしり汗をかいていた。 暗闇は人の目から姿を隠し、体を癒してくれるが流石にこの傷を癒やすのには長い時間がかかるだろう。銀は恐ろしくはないがそれで攻撃されるとなると話が違う。もしかしたらこの傷が原因で死ぬかもしれない。敵も迫ってくる。どうにかしなければ…… 気持ちは焦るが今はここで体を休めるしかない。ハンターに追い付かれて止めを刺されてここで終わってしまうかもしれない。死に損なっていた自分もついにここで終わり……この世界に残すことになってしまう愛しい存在が心残りで仕方がないが、幸せで長生きしてくれることを願う。「……天にぃ?」 人間には見つからないはずの闇の中にいた天は声をかけられて驚いた。しかしその響きはよく知った美しい調べだった。 「りく…… どうしてここに? 夜は出歩いちゃダメって言ったでしょう」 天はりくと呼ばれた少年をきつく睨む。りくは天に怒られひどく怯えてしまった。 「ごめんなさい天にぃ……でもオレ今夜は胸騒ぎがひどくて……夢で天にぃが死んじゃうところを見て不安で仕方なくて慌てて出てきたんだ……」 いつもの寝床にもいないし、とりくは瞳に涙を溜めて天を見つめた。天を心配してくれたことは嬉しかったが、こんな夜中に一人で出歩くなんて危ないことをさせてしまった自分を情けなく感じ、ため息をついた。