「「「チュゥウゥン☆」」」 話題が自分達に向いていると気がついた三匹は、狼の内臓を貪るのを止めてサイモンに向かってあざとい鳴き声をあげて見せた。 口元が血で真っ赤だが。「はい、それぞれファングと同じランク4にランクアップしました。マロルは火鼠、ウルミは濡れ鼠、そしてスルガは鉄鼠てっそらしいです」 種族が変わったマロル達は、それぞれの毛皮を名前通りに変化させた。マロルは炎を、ウルミは液体や冷気を纏い、スルガは毛皮その物を金属に匹敵する硬さに変える事が可能なようになった。 元がただのネズミとは思えない変異っぷりだ。「聞いた事がありますか?」「いや……知りやせん。この辺りには居ないのか……もしかしたら新種なんじゃ!? だったらテイマーギルドや冒険者ギルドに報告すれば賞金が手に入りますぜ!」そうサイモンが言うところを見ると、恐らくマロル達は新種のようだ。濡れ鼠は兎も角、火鼠と鉄鼠は『地球』の昔話等で妖怪の一種として聞いた事があったので、そうではないかと思っていたのだが。(そうなると、マロル達が今の種族にランクアップした原因は俺か。『地球』に行って、知識を手に入れたからかな? だとすると、もしファングが双子だったら今頃ヘルハウンドでは無く狛犬に変異していたかもしれませんね) そんな事を想像している間に、サイモンの腕の治療は終わり、ヴァンダルーは彼から手を離した。「もうそろそろ大丈夫だと思います。立てますか?」「ええ、何とか……いや、面倒をかけてすみませんでした。礼と言ってはなんですが、そこのゴブリンとこれを」 ふらりと立ち上がったサイモンは、自分が倒したゴブリンの死体を指差し、更に剣を鞘に納めてからそれをヴァンダルーに差し出した。「安物ですが、今持ち合わせが無いもんで……まだ殆ど使ってないから、武器屋なら幾らかで買い取ってもらえると思います」「良いのですか? 冒険者としてやり直すのでは?」「ええ、自分の身の程ってものが分かりやした。俺には、この生き方は向いてなかったんでしょう……やり直すにしても、他の生き方でやってみます」 サイモンは狼に殺されかけた事で、すっかり心が折れていた。ダルシアの講演を聞いて奮い立ったが、その息子に命を助けられたのはきっと運命なのだ。自分は冒険者と言う職業に向いていないと言う、女神のおぼしめしなのだと、思い込もうとしていた。 勿論「他の生き方」に心当たりはない。過去にそうしてやり直そうとして、失敗したのが今の彼なのだから。 せめて生産系ジョブに就ければ違ったのだろうが……今のサイモンのジョブは【剣士】でレベルは10。次のジョブチェンジまで90もレベルを上げなければならない。