ベッドに横たわると、程なくして陸さんは寝入った。 すやすやと安心したように眠る姿が、幼げで愛おしい。 この人を守りたい。支えたい。そう思った。足音を立てないように気を付けながら部屋を出る。 「あら。もう帰るの?」 「はい。陸さん、お疲れの様子だったので…」 「ああ…ごめんなさいね。あの子、最近また塞ぎ込んじゃって…発作も頻繁に起こしてるみたいだし、ご飯は何とか食べさせてるんだけど」 「……」帰り道。電車に乗っていると、ふと九条さんの広告が目に入った。 優しかった。そう語る陸さんの声は穏やかで、本当にそうだったんだなと伝わってきた。 人の根本的なところはそこまで簡単には変わらないと思う。 13年間優しかったお兄さんが、急に妹を邪魔者扱いするようになるだろうか。 もしそうなら悲しくなるだけだ。違うと想像するのは、そう思いたいからだろうか。 九条さんは今、陸さんの事を一体どう思ってるんだろう。