いつの間にか、ドラ公はするりと俺の腕の中から逃げ出していた。また、そうやってはぐらかす。これで何十回目だ? 俺を置いてさっさとドアから出て行こうとしている後ろ姿が、少し先の未来を暗示しているようで、ふつふつと怒りにも似た熱が全身を煮えたぎらせる。タイムリミットは刻々と近づいている。俺が死んだ後、お前は俺の事を忘れて他の男のところに行くのか? それともずっと俺を思って泣くのか? そんなの、どっちも許せるはずがない。いよいよ、本気で覚悟が決まった。俺は、三十年間一緒に暮らしてきた最愛の吸血鬼と、どんな手を使ってでも絶対に結婚する。