何かが切れたように龍之介はその場で涙を流す他なかった。楽も隠すようにして必死に溢れる涙を止めようとしていた。「...九条さん...」 「......行こう、ソウ」 「...でも」 「もう俺たちにできることなんてないよ」 そう言うと大和と三月は踵を返し歩き出した。 一織もつられるように歩きだす。「...千さんと百さんは分かっていたんですか...?」 「...まさか。こんな展開を望んでいた訳じゃないんだけどね......でも、あんな笑顔を見たら何も言えないかな」 そう言うと千と百もまた大和たちの方へと歩き出した。「またね、壮五くん。今度は王の間で会おう」 ヒラヒラと振られる手。返す言葉はなかった。「......嘘つき。もう、許してなんかやらねぇから...」 環も千たちに続いて行ってしまった。「......結局は誰も救われなかったんでしょうか...」 いや、救われてしかいないのかも知れない。 笑顔で眠る天を見て残酷にもそう思ってしまった。 「こんな結末の幸福を望んでいた訳じゃないのに...」 二人はもう会えない。 死とはそれを意味するのだ。 天はそれを分かっているのか、いないのか。 確かめる術もない。もう、それで良いのかも知れない。 死んでしまったのだから... 「さようなら...」 世界一幸せで不幸な王。