学園から少女達が失踪しはじめた事件と”蛭蟲のムラサキ”が学園に赴任した時期はピタリと
一致する。
当初、王国騎士団から派遣された調査団の騎士はムラサキを主犯と決め付け
神敵認定した挙句に殺そうとし、実際に斬りかかった。
だが騎士の剣がムラサキという少女をいくら切り裂き引きちぎっても
少女は抵抗せず受け止め、一緒にいた小さな少年に
「…ごめんニャ、にゃーは実は人間じゃないのニャ…」
胸に剣を突き刺されたまま、騎士と王国と神にではなく
たった一人の小さな少年に向けてムラサキは謝罪した。
謝る必要なんて無い!…とムラサキと騎士の間に立った小さな勇者は、
「ムラサキはずっと僕と一緒に居たんだ!昼も夜もずっと!
どうしてセイギの味方の騎士様がこんなヒドイ嘘をついて剣を振るうのか!」
やかましいこのクソガキが!と一喝しその子もろとも切り伏せようと騎士が振りかぶった瞬間
辺境ニーヴル所属の書物管理者が「ま、ま、ま…」と割って入り
騎士の剣を止めた。
猛り狂った王国騎士に対して
「この少年はシューペリア家の現当主、王家の血に連なる正統継承権持ちです。
もし傷付けでもしたらあなたの首だけではすみませんヨ」
と、軽くひねった後
「言葉も通じるこんなに可愛くて小さな者相手に、言いがかりをつけて直ぐ剣で斬りかかる
とは、いやはや王国騎士も落ちぶれたものですな!」
「貴様!愚弄するか!」
「いや、感謝して頂きたいものですよ?もし私が割って入らなければ
この少年に攻撃の意思を見せた貴殿はそこのカワイイ無害な神様の怒りを受けて
次の瞬間爆裂四散していたことでしょう」
「…ね?」
と、ムラサキを見ると、彼女は本気で「何故止めた」という不機嫌そうな顔をしていた。
「この子の前では、そんな事はしないニャ この子の前ではにゃー」
しれっと口を尖らせてつぶやく。
「大体シューペリアの前当主グリフォンは死罪になり、先日ギロチンに掛けられたではないか、
その大逆人の息子だぞこやつは!」
「王家の血統であることには変わりありませんし、親の罪を子が背負う類の事件ではありませんでした。
…と言いますか子の前で親の死を語るなど、本当に貴殿という騎士は…」
(ん…前当主は…首を刎ねられた…?)
「ああ…そういうこと…か…」