銀色の腕を使わないまま、片手だけでベディヴィエールは自らがまとう鎧を解いていく。器用なものだと思うけど、隻腕の騎士であった彼にとっては慣れ切った動作なのだろう。着替えの最中、色素の薄い金の長髪が揺れ、間接照明の柔らかな明かりがベディの色白な首筋を照らしていた。
オレの不躾な視線に気が付いたのか、端正な顔立ちが不意にこちらへと向けられる。静かな水面を思わせる水色の瞳が、柔らかくオレを見つめていた。
鎧を解き平服姿になったベディヴィエールが、オレの隣に腰かける。ベッドに隣り合って座りながら、オレ達はどちらともなく指を絡ませ合った。剣を握る騎士の指は何度もマメを潰して強くなってきた指先だ。魔術師の端くれであるオレなんかよりも、ずっと厚くて太い指に触れながら、ベディへと肩を寄せる。
ふっと漂うのは深い森の香り。木々に囲まれた泉のような、そんな香りはしかしオレの鼓動を昂らせていく。何度となく身体を重ねても。いや、行為を重ねれば重ねるだけ。オレはベディをより強く求めていった。
「マスター」
そっと耳元に囁かれて、背中に銀色の手が触れる。その冷たさに意識がいったのも一瞬、唇同士がゆっくりと触れ合った。目を閉じたまま互いに舌を絡ませ合えば、気持ちよさに喉奥から声が漏れそうになる。舌先がぬるりと擦れ合う度に、頭の奥から快美感が染み出てくるかのようだった。
自然と息が荒くなり、心臓の鼓動が速くなっていく。ドクドクと脈打ち、血液は痛い程に下半身へと集中していく。それはオレだけでなく、ベディヴィエールも同じだったようだ。
キスを続けたまま、オレは指先をベディの下半身へと伸ばす。引き締まった腿をなぞり、股下を盛り上げるそれを布越しに撫でる。布越しとはいえ敏感な亀頭に触れられ、ベディは喉奥から小さく息を漏らした。