それに、もうすぐ【英霊降臨】の効果時間も切れるのでしょう? お前等は俺を警戒して、この階層に入る前から使っていたようですからね』 自分達の状態を、先程エドガーが焦って仕掛けた理由も含めて当てられて、彼らの顔に動揺が走った。『能力値、特に魔力が大幅に下がる。ゴルダン高司祭は御使いを降臨させただけで魔力が十万に増えたと語っていましたからね。英霊降臨なら、百万から二百万ぐらいですか? でも英霊降臨が解ければ……お前達は基礎的な武技も魔術も何も使えなくなる』 そう続けながら、(消耗が激しいのは、俺もですが)とヴァンダルーは胸中で呟いた。 己の魂を実体化させて戦うこの【魂格滅闘術】、使ってみると予想以上に魔力の消耗が激しい。更に、ハインツ達に対して攻撃し、攻撃を受ける度に、魔力が大きく削れていく。彼の六十億を超える魔力の総量と異常な回復速度でも、補いきれていない。エドガーから奪った分など、足しにもならない。 何故なら、ハインツ達に対して発射し、切り離して爆発させ、斬り飛ばされているのはヴァンダルー自身の魂なのだから。「……それが何だってんだ。もうすぐジェニファーとダイアナも戻ってくるぜ、俺達はこのダンジョンじゃ幾ら死んでも蘇る事が出来るんだからな」 ヴァンダルーが消耗していると気がついていないエドガーは、そう強がって見せる。しかしそれは完全なハッタリだった。 何故なら死んで『街』に戻ると、傷は残らず癒えている。しかし消費した魔力はそのままだからだ。(クソ、此処が外だったら魔晶石をもっと持ってきていたんだが……) エドガーは魔石を加工して作る、魔力を繰り返し充電可能な魔晶石を思い浮かべた。魔力が切れそうになった時に重宝していたのだが……このダンジョンでは魔物から魔石を含めた全ての素材を手に入れる事が出来ない。 更に死ねば『街』と言う安全地帯で復活する事が出来る。