お客様を歩かせずに売上アップ する方法
今日は、学術的なお話を。
お客様を歩かせないことにより売り上げを上げる百貨店のフロアモデルの話です。
インストアマーチャンダイジングという学問があります。
これは以下の公式になりたちます。
お店の売上 = 売場数 × 売場立寄り率 × 買上げ率 × 客単価 × 通路歩行者数
※数字は平均
百貨店は広大なフロアがあり、メーカーはそのフロアに売場を持ちます。
フロア内にはたくさんの売場があるため。お客様を歩かせれば歩かせるほどフロアの売上が上がります。
以前はこれが常識とされました。
しかし今は違います。
お客様を歩かせないことによって、フロアの売上を上げるのです。
これは、このほど改装オープンした新宿伊勢丹と阿倍野ハルカスに見ることができます。
どういうことか解説しましょう。
これらのフロアでは、売場面積を1割縮小し、休憩スペースを取ることにより、お客様を歩かせない工夫をしています。
つまり頻繁に休憩してもらうのです。
広大なフロアでは年配者は疲れてしまう。
日本の百貨店は世界でも特異で、10階建て位の長細いビルに集約されています。
つまり歩き疲れて、売場で商品を見る意欲がなくなってしまうのでした。
百貨店は通常在店時間は1時間くらいです。
思ったよりも在店時間は少ないです。
郊外SCの1/2以下だと思います。
これでは、限られた1時間の中で、メーカーは売場の奪い合いになります。
これはテナントにとっても百貨店にとってもよくないです。
そこで考えたのが、「お客様を歩かせないこと」。
頻繁に休憩させることにより、体力補給時間→買い物嗜好時間を長く取り、落ち着いて買い物をしていただく手法です。
これにより、お客様の在店時間は2倍の2時間になり、売上が増えるというもの。
それを狙ったのが、きのうオープンした近鉄阿倍野百貨店ですが、すでに3月オープンした新宿伊勢丹で実証されています。
新宿伊勢丹は、フロアにパークと呼ばれる休憩所をつくりました。
カフェやシュースバーがあり、買い物客は休憩できます。
フロアの買い物客は、頻繁にそこで休憩し、買い物試行時間を費やします。
ついでに飲食もするのでパーク内の売上も上がります。
そして、休憩が終わった後は、商品をいいと思った店舗に引き返し、そこで高額な買い物をするわけなのです。
さらに他のお店も見てみようという気力が復活します。
伊勢丹のこの方法で、売場面積は1割ダウンして、売上は1割上がりました。
「お客様を歩かせない方法」で売上を上げたのです。
この公式は以下のようになります。
お店の売上 = 売場数 × (休憩指数×(売場立寄り率 × 買上げ率 × 客単価)) × 通路歩行者数
※数字は平均
つまり、休憩すればするほど買い物意欲が増し、売場立寄り率と買上げ率、客単価が向上するのです。
いつか、この指数をどこかの百貨店といっしょに実証実験してみようと思います。
インストアマーチャンダイジングの公式が根底から覆る日がもうすぐ来るでしょう。