一人廊下に取り残された天は頭から被せられた一織の上着の中で泣いていた。壊れた水道の様にボロボロと次から次へと溢れ出す涙を止める術をワスレタカノヨウニ・・・ 陸の口から出た完全なる拒絶。今までどんなに冷たく接してもあの子は子犬の様に側に寄って来た。天にぃとその可愛い口から紡がれる天だけを呼ぶ特別な言葉が嬉しかった。 口には出せないけれど陸に呼ばれるのが大好きだった。 だが、今は…一緒なお腹から生まれ育ち十三年間共に生き、途中から離れ離れになってしまったが再び住む場所生活は違えどまた一緒に歩き始めたのに…完璧だけを求めている天の態度、行動が招いた悲劇だった。「ボク、は・・・」ガタガタと震える体を止められず、周りの音も景色も何もかもを天は今見えず聞こえずだった。頭の中を耳を駆け巡るのは陸のあの言葉だけだった。 どんなに苦しい治療でも弱音など一切吐かなかった陸。痛くない、苦しくないよ?とケロリとしていた陸。見ているこっちが苦しくて痛かった。幼い細い手に痛々しく刺さる点滴の針。変われるモノなら変わりたかった。 何故、どうして、陸だけなのか。自分は健康で陸だけが病気で苦しんでいる。やりたい事、運動、動物もぬいぐるみも、食事にだって制限が掛かっていた。一年の半分を病院のベッドで過ごす事だってあった。 遠足にも運動会にも修学旅行にも参加出来ず天のお土産話をそれは嬉しそうに聞いていた。 そんな陸のためにボクは一生懸命頑張った