「……大好きだよ、天にぃ。もう13歳じゃなくても、会えなかった5年間を取り戻せなくても、天にぃがアイドルとして認めてくれなくても、……もう、弟じゃなくても」 「陸、」 「…ずっと、ずっと、天にぃと生まれてこれたことは、オレの誇りで、宝物で、…っ…」ぼろぼろと、大粒の涙が陸の頬を伝っていき、その腕の中の日記帳へとぱたぱたと落ちていく。天の胸が陸への愛おしさと罪悪感でいっぱいになり、胸がつかえて、苦しくて、天はすぐにそのまま再び陸を抱き寄せた。陸はそのまま、声を上げて泣き崩れた。「…っ、う、天にぃ、天にぃ……」 「陸、泣かないで…いい子だから」まるで幼い頃のように、泣きじゃくる陸の頭を優しく撫でて、反対の手で背中を摩って、天は陸を慰める。それでも陸の涙は止まることがなかった。「寂しい、寂しいよ……っう、う、本当は全部、うう、ぐすっ、う、嘘だよ、もう、弟じゃなくてもなんて、ひくっ……う、嘘だ、やく、そく、約束だって、もう、いい、なんて、ほん、本当は…本当は…っ」 「…うん、うん、分かってる…ごめんね、ごめんね、陸」 「ずるいよ、ずる、ずるいよ天にぃ……ばか、天にぃの、ばか……」日記帳を床に落とし、天の背中に腕を回しつつも、天の腕の中で小さく暴れて、しゃくりあげながらぽかぽかと天の背中を優しく拳を握り叩いてくる陸を、天はより一層強く抱き締めた。そんな天の温もりに陸もやがて叩くのをやめて強く抱き締め返してくる。「……ずっと、一緒にいて…」行かないで。 陸の虚ろげな呟きに、天はぐっと眉を寄せた。この13歳の、天が家を出ていく時に陸が言った言葉と全く同じ一言が、陸の本音の全てだった。陸なりにたくさん考えて、成長して、今は同じアイドルとして、同じプロとしての意識を持って、天に叱られないように行動して。それでも、やはり陸はずっと悲しみも、寂しさも抱えていて。そして天は、どうしてもそれを癒してやることはできない。陸が少しでも幸せになれるように祈って、陸の仲間達に託すことしか、できない。 ピピ、と部屋の時計が鳴った。天はまだ泣き続ける陸の背中を擦りながら、時計に視線を移す。気がつけば、もう日付が変わっていた。天はゆっくりと、陸を腕の中から離す。真っ赤に目を腫らして、未だにしゃくりあげる陸の目元を優しく何度も親指でなぞり、涙を拭ってやる。「……お誕生日おめでとう、陸」 「…ぐすっ……天、にぃ…」呆然と自分を見つめる陸に、天は目を細めて微笑みかける。