目を覚ますと、病院のベッドの上にいた。 別に珍しいことではない。昔はよくあった事だ。 けれど、最近はこんなことなかったのに・・・とぼんやり思いなから、(なんで倒れたんだっけ・・・) 陸は倒れる前の記憶を辿ってみた。 たしか・・・そう。 今日も中には入れてもらえなくて、考え事をしているうちにドアの前で発作を起こして・・・それで・・・(俺、レッスン室の前で倒れちゃったんだ!!)しまった!!と青くなる。 ただでさえ遅れている自分が、こんな所で倒れている場合ではない。 すぐに戻って練習しなければ、ますますみんなに置いていかれてしまう。 もしかしたら、自分が倒れたことでみんなに迷惑をかけたかもしれない。 そのせいでレッスンに支障が出ていたら大問題だ。(すぐに謝らなくちゃ)思った瞬間、立ち上がっていた。 腕に刺さっていた点滴をひきちぎるように外して、畳んであった私服に素早く着替えてしまう。 戻らなきゃ。 戻らなきゃ。 頭の中には、それしかなかった。 みんなの足を引っ張りたくない。 その一心でやっていたはずなのに、よけいに迷惑ばかりかけている自分が嫌になる。 早く戻って、早くレッスンをして・・・「はっ、うっ!」一瞬、呼吸が乱れた。 慌てて口元を抑えながら膝をついた。 咳が出始めたら終わりだ。 ダメ。ダメ。 落ち着け。落ち着け・・・ 必死に言い聞かせ、ゆっくりと息を吐く。 大丈夫、大丈夫… いつも通りに呼吸すればいい。 息を吸って…吐いて・・・また吸って… ドドドド・・・と煩いくらいに早くなっている鼓動。 酸素が足りずにくらくらと定まらなくなった視界を、一度閉じてリセットを測った。 ほら、大丈夫。大丈夫… まだいける。まだ立てる。 頑張れ。 追いつかなきゃ・・・あの人に・・・ あの人に認めて貰わなきゃ・・・ たとえ、出て行けって言われても・・・ たとえ、どんなに突き放されても・・・「それで?どうするんだ?・・・」 「?」