ある時、アイドル合同の大きな仕事があった。その打ち上げに、天は陸も連れていくことにした。 夜遅くに一人で家にいさせるよりは、一緒にいた方が安心すると思ったのだ。 リヴァーレやアイナナの6人とはそれなりに友好関係を築いていたので、天と陸の事情もおおまかに伝えていた。スタッフは含まない、身内だけの打ち上げだった。アイナナのレッスン室に食事などをデリバリーして、宴会が開かれていた。天が陸を連れて部屋に入ると、すでに皆が揃っていた。 陸は天の背中に隠れていた。促すと、ひょこっと顔を覗かせる。 天が陸を後ろから引き寄せて、陸を自分の前にして肩に両手を添えて紹介した。 「陸、ごあいさつして?」 「七瀬陸です。天にぃの弟です。15才です。ええと、仲良くしてください」 一生懸命にぺこりとおじぎをする。よくできたと頭を撫でてやれば、陸は照れたように微笑んだ。あの夜を境に、陸は本来の甘えん坊と人懐っこさを発揮しだしたので、皆にもすぐに可愛がられていた。 特に環、三月、モモに構われている。陸も楽しそうにしていて、天はその笑顔を眺めて、満ち足りた心地になった。親を亡くしたばかりの陸をさみしがらせないように気を遣ってくれたのか、天が忙しいときは環を中心に声を掛けてくれて陸はアイナナ寮にお泊まりにいったりしていた。天が本番前に陸が発作を起こしてしまった時には、八乙女社長が陸を病院へ連れて行ってくれたこともある。 陸が入院した時は、他グループのメンバー達もひっきりなしにお見舞いに来てくれたりしていた。