愛しい人の名を呟きながら、声を殺して泣いていた。
青葉が部屋に戻って来た時、ディオの姿は何処にもなかった。
シーツの乱れも直されていて、まるで何もなかったかのように綺麗に整えられている。
頭を冷やすためシャワーを浴びに行ったのだが、ディオがいなくて少しだけホッとした。
感情に任せ、また酷い言葉をかけてしまいそうだったから。
「……はぁ」
ベッドに深く腰を沈めた青葉は、大きく溜息を吐いた。
シーツは既に冷たくなっていて、ディオの温もりは感じられない。
数時間前、ここでひとつになったのが嘘のようだ。
ディオと身も心も繋がれる瞬間は、きっと天にも昇る気持ちなのだろうと思っていた。
だけど実際には、怒りと悲しみに支配されたまま乱暴に抱き、後には虚しさだけが残った。
少しやり過ぎたのでは、という後悔の念もあったが、全部ディオが悪いのだと思い直そうとした。