「おい、大丈夫か?!」 誰がどう見ても危ない状況だ。 今まで二人のやり取りを黙ってみていたアイドリッシュシックスや楽、龍之介も、この事態に思わず動き出す。 「この症状……気管支系の?」一織は苦しむNANAの様態を冷静に分析する。 それに答えのは九条天だ。 「喘息だよ。陸、吸入器はどこ?」 「はぁ……はっ……その名前で、呼ばないで」 「そんなこと言っている場合じゃないでしょう?! ちょっとごめんね」そういって天はNANAの体を探る。しかし、先ほどまでステージに立っていたNANAの衣装には、ポケットらしきものがない。 天は思わず舌打ちをする。 「病院に連絡しよう」この場で最年長の龍之介が提唱する。 しかし、スマートフォンを取り出したところで、NANAが必至の形相でそれを止める。 「まって、ください。今……呼ばれたら、困り、ます……!」 「そんなこと言っている場合かよ?!」楽が語勢を強めていったが、NANAは決して譲らない。 そんなNANAを見て、大きなため息を一つ。意を決して口を開いたのは一織だ。 「マネージャー、NANAさんの楽屋の位置はわかりますか」 「は、はい! 配置図が、ここに」 マネージャーである紡は、今日のミューフェスの資料を一通り持っている。出演者リストはもちろん、タイムスケジュールのほかに出演者の楽屋の位置を記した地図も持っていた。 慌ててそれを取り出す紡。途中ほかの用紙も落としたが、今はそれどころではなかった。 「今は持っていなくても、楽屋になら吸入器があるかもしれません。私が行ってとってきます」 「それならボクが行く」 天が立ちあがるが、一織に首を振られる。