「天、むしろ私はあなたに謝りたいわ。私は後悔してる。 踏み込まれたくない事情があるようだったからあえて踏み込むようなマネはしなかったけど。 もっと早く気づいてあげたかった。助けてあげたかった。 家族も頼れない。本物の家族も頼れない。 そうなったら頼れる大人なんて 私くらいしかいなかったのにね。ずっと傍にいたのに・・・貴方たちのことちゃんと見てると思ってた。 特に天は未成年だしね。ちゃんと私がって思ってたのに。 肝心なことには目を瞑ってた。 本当に・・ごめんなさい。ダメな大人だったわね私も。」「っ・・・・」ずっと、1人だと思ってた。七瀬の家を出てからというもの大人が僕を見る目は決まって価値があるか、ないか出来るか、出来ないか天才か、凡人かビジネスになるか、ならないか。そんなものばかりだった。僕自身がどんな人間か、どんな気持ちかなんて考えて接してくれる人なんかいなくて。優しい言葉をかけてくれる人がいたとしてもそれは何かしらの思惑から生じた優しさだった。嘘と偽りが笑顔の下で見え隠れする そんな大人しか周りにはいなかった。自分のことを真に見てくれる大人なんていないとそう思ってた。そんな僕にこんな真摯に謝って、僕のことを案じてくれた大人は マネージャーが初めてでその温もりある優しさや思いやりに心が震えた。「・・マネージャーはここに来てくれた、 僕の為に怒ってくれた、味方になってくれた・・・・・ 僕が九条になってからそんな大人今まで誰もいなかった・・・」「天・・・・」「ずっと・・・誰かに助けて欲しかった・・でも・・・・言えなかった・・・。 陸にだって言えない。あの子はきっと僕の傷みを自分のことのように感じてしまうから・・・ そうなるなら僕1人で抱えてしまう方がよっぽどマシだって思ってた・・・ でも・・・本当は・・・苦しかった・・・。だから・・・っ・・」いつもの毅然としていた自分からは想像もつかないくらい たどたどしくしか言葉が紡げず、目からは堪えきれなくなった涙がぽたぽたと落ちていく。これで肩でも震わせたら完全に子供だ。それだけはと必死に堪えようと手にぎゅっと力を込めて 握りしめていたらふと少し僕より体温の低い手が添えられた。「大丈夫。言わなくてもちゃんと私も楽も龍も分かってるから無理に言わなくてもいいわ。 泣きたきゃ泣く、怒りたかったら怒る。頼りたいときは頼る。 そんな難しいことじゃないのよ。 ゆっくりでいいから力を抜くこと、 助けを求めることを覚えてくれればいい。陸くんももう昔のままじゃない。 子供から大人に成長していってる。 今なら違う受け止め方をしてくれるかもしれない。 人は変わるものよ。いい意味でね。だからしっかり話てみたらいいわ。」「は・・ぃ・・・っ・・・」