今度は良かったんじゃないかしら。早く後ろを向いて、紗夜を褒めてあげたい。「紗夜、今回は良かった…ちょ、ちょっと、あなた、なんで泣いているの!?」メンバー全員が固まる。先ほどの演奏を修正して素晴らしいものを見せてくれた彼女が、ボロボロ泣いている。…とにかく、リサや燐子に先を越されないうちに介抱してあげたい。「燐子、あこ、ここは友希那に任せよう」「えっ、でもぉ」「…友希那さんに任せた方が……氷川さんが落ち着いてから、みんなでお話を聞くのがいいんじゃないかな」「うーん、それもそうかなぁ…友希那さん!紗夜さんのこと、よろしくお願いします!」…思いもかけず、リサと燐子に誘導されて、紗夜と2人になれた。なってしまった。「紗夜、大丈夫?やっぱり、どこか悪いんじゃ…」「…………」「…………」紗夜が喋れるようになるまで、背中でもさすってあげよう。ハンカチで、目元を優しく拭ってあげる。…こんな、紗夜はきっと悲しくて泣いているのに、私はこの状況に幸せを感じてしまっている。紗夜は考え込む性格だ、とリサがいつか言っていたし、1人で、こんな風に泣くこともあったのかもしれない。その度に、私が横にいてあげられたら…。紗夜を1人で泣かせることがなくなったら…。「…湊、さん」「ゆっくりでいいのよ。あなたの感じていること、教えて」「…その」「?」「…優しく、しないで…ください」