対してフェルトニアはチョコレートのような艶のある肌をした黒髪の美女で、金の装飾品で身を飾っている。そして下半身が体高の低いサソリのものなので、視線の高さはアラクネよりも人種に近い。 なお、アンドロスコーピオンには小型種や大型種はおらず、一種のみのようだ。「貴様らアンドロスコーピオンはガルトランドの砂漠に見事に適応し、砂漠ではケンタウロスより早いと謳われているではないか! それにオアシスの水を使った農業で成功している! 砂を砂岩にする魔術を使って、見事砂漠に黄金の都市を作りあげた! 羨ましい限りだなぁ!」「貴方達氷雪系巨人種はガルトランドの寒冷地帯に適応し、凍土と氷の王国を築いているではありませんか! 確かに農業には向きませんが、ヒュージトナカイやスノーベアを家畜化し、巨大な魔物を倒して肉や毛皮を取り、氷の都市で豊かに暮らしているではありませんか! ああ、羨ましい!」「なにをぉっ! 貴様等アンドロスコーピオンは下半身のハサミと尻尾の毒針を武器にし、上半身で魔術を唱える魔術戦士が多く、精強ではないか!」「貴方達氷雪系巨人種も、身体能力に優れている上に、水属性の魔術が得意な魔術師が多く、その勇猛さは砂漠にまで届いていますよ!」「……これは口喧嘩なのでしょうか? まあ、それぞれの種族の評判を聞けるのは面白いのですが」 ザルザリットは苦笑いを浮かべながら、しかし「二人の言っている事、それ自体は本当です」と保証した。 ゾルクとフェルトニアはどうやら自分達が苦労している事をアピールし、ヴァンダルーに自分達が暮らす都市、若しくは集落に来てもらうのが狙いらしい。だが、そのまま言い争いを始めたため、お互いを褒め合う妙な口喧嘩になってしまったようだ。 ちなみに、口喧嘩に参加していないザルザリットが長を務めるグラシュティグの集落はガルトランドの壁沿いに存在する。山羊の下半身を持つ彼女達は、壁を器用に移動して鉱石資源を採掘し、壁から染み出て来る地下水を利用して段々畑や棚田で農業を営んでいるらしい。