律子「そして、あなたたちと同じような学園生活を、楽しい暮らしを送らせてあげたいの!……だから、お願いよ……」
ただ、その時に語られなかった“さよなら”の四文字だけが、この手紙の最後に寂しく添えられていた……。
瑞穂「さよなら……って。……先生は工藤さんのことを……諦めてしまったの……?」
瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂初実「瑞穂さんっ!……わたし、どうしたらいいのっ!?……どうすれば……あの人に応えてあげられるのっ!?」
堰を切ったように、初実は激しく叫んだ。せき
そして、うずくまって肩を震わせはじめた……。
瑞穂(この人……丹菜と同じ事を……)
瑞穂
はそっと初実の肩に触れた……。
瑞穂「ね……教えて、あなたと先生の間に何があったのかを。そして、なぜ今先生に会ってやれないのかを……」
……しばらく初実は泣いていたが、やがて立ち上がると過去のことを、静かに語りだした……。
そこには律子の認識していた事情とは、また違った側面が隠されていたのだ……。
初実は律子との楽しい日々の中で、律子にも見通せないある苦しみを抱えていた……。
それは彼女が律子と出会うまでの、療養所での孤独な暮らしのこと……。
両親も見放し、ただ一人外を見て暮らす日々……。
会話の相手は診察時の医者や看護婦だけ……。
重病を抱えた初実には、誰も近寄らなかった……。
それが律子との出会いによって、寂しさは埋め合わされはしたものの。
反対にそれを失うことの怖さが初実の枷となり、日増しに恐れは膨らんでゆき……。
律子の求愛によって、破滅を引き起こしたのだった……。
初実「わたし……怖かったんです。この華奢な身体が、律子さんを受け入れられないかもしれきゃしゃないってことが……」
初実
「もし、受け入れられなかったら……きっと律子さんはわたしから離れていってしまう……それが怖かったの!」
初実「だから……律子さんを拒否した時……もう誰も好きにならないって……そう決めてしまったんです」初実初実初実初実初実初実初実初実初実初実そこまで一気に話し切ると、初実は深く息を吐いた……。
初実「……それに、幼い頃からの生活のせいか、お医者様以外の人が、肌に触れるのがとても……怖いの」
瑞穂「……今でも、そうなの?」
初実は小さくうなづいた……。
瑞穂(そうか……だから、先生はあの服をわたしに……)
きっと、律子は全てを分かっていたのだろう……。
瑞穂は今更ながらに律子の思いやりの深さを知った……。
瑞穂「ね……だったら、まず手を繋ぐことから始めようよ」つな
瑞穂は明るくそう言い、手を差し出した……。
初実「えっ……で、でも……わたし……」
初実は手を胸に抱き、硬直したように震えた……。
これは予想以上に重病だ……。そう瑞穂は感じた……。
瑞穂「……工藤さん。先生、死んじゃうかもよ……?あなたのこと、かなり気に病んでいらしたし……」
瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂初実「ええっ!!……う、嘘……っ!嘘でしょっっ!?……そんなことって!!」
瑞穂「わかんないわよ、そんなこと……。でも、手紙の“さよなら”って、そうとも取れない?」
無論、それは瑞穂の狂言である。
律子がそんなことをするような無責任な人間ではないことは、瑞穂は良く分かっていた……。
しかし、初実はまじめにそうかもしれないと思ってしまった……。
初実「ど、どうしよう……そんな!どうすればいいんですかっ!?瑞穂さんっ!!」
初実
瑞穂「あなたねぇ……どこまで甘えん坊なの!なんで自分で解決しようとしないのよ!!」
本気で瑞穂は怒った。
律子の気持ちを考えれば、まだ優しいものだ。
糸の切れた人形のように、初実はうずくまった。
初実「で、でも……わたし……あああっ!」
瑞穂「ふぅ……わかったわ。じゃあ、こうしましょう。まずわたしが電話で安否を確認する……」
瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂初実「えっ!?……ほ、本当ですかっ!」
顔を輝かせ、初実は立ち上がった。
瑞穂「でも、条件があるわ。わたしとスキンシップの練習をすること。……それが条件よ」
瑞穂
そう言って、瑞穂は再び手を差し出した。
初実「そ……んな。……ああ……くう……」
震える手を上げようとするが、なかなか先に進まない。
瑞穂「どうするの?……出来ないのなら、わたし、もう帰るわよ……」
瑞穂
初実「く……ああっ!」
初実
はついに震える手を瑞穂の手に委ねた……。
瑞穂はその手をぎゅっと握り、握手した……。
瑞穂「良く出来ました……えらいわ」瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂グイッ……
初実「キャッ!?」
初実「んッ!……んんーーーっ!!」
初実はいきなり唇を奪われ、目を見開いた。
しばらく身体を硬直させていた初実だが、慌てて瑞穂を引き離した。
初実「ぷあっ……ハァハァっ、瑞穂さんっ、何を!?」
初実初実初実初実初実初実初実初実初実初実瑞穂「うふふっ……工藤さんの唇、奪っちゃった やれば出来るじゃない……」
瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂初実は膝をガクガク震わせ、地面にへたり込もうとした。
しかし、すかさず瑞穂は再び抱き寄せ……。
初実「きゃ……っ!……ンンっ!う、……んぐっ……や、やめ……んんんっ!」
瑞穂「ふ……ン……んん……ちゅっ……ぷ……」
初実「やっ!……んんんっ……ん、ううっ……!?」
初実は必死で抵抗するも、そのひ弱な力では瑞穂を引き離せなかった……。
瑞穂(ホント……なんて弱々しいのかしら……)
瑞穂は唇を押し付けながら、思った……。
初実の身体を抱えたまま、瑞穂は顔を離した。
初実「はぁはぁ……瑞穂さん……なんで、こんなこと……」
初実
瑞穂「工藤さん、これくらいのことを出来る勇気があったなら先生もあなたも、もっと幸せでいられたのよ……」
瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂初実「はぁはぁっ……で、でも今更……」初実初実初実初実初実初実初実初実初実初実瑞穂「まだ、遅くなんかないわ……。律子先生は……ずっとあなたを待っているんだもの」
初実「えっ!?……ううっ!……んんっ!?……んーーっ!」
瑞穂は初実の力が弱まるタイミングを逃さず、舌を口腔内に挿入した……。
初実(し、舌が……入ってきた……うそ……!)
瑞穂「ちゅるっ……んぐン……ちゅる……はぁ、あむ……」
初実「あっ……んぐぅ……ちゅっぷ、ぷあっ……んぐっ!?」
初めて舌を吸われ、口腔内を犯された初実は気が遠くなるのを感じ、気を失いそうになる。
しかし、律子の姿が思い出され、なんとか持ちこたえた。
初実「ああっ……ちゅっ、ちゅるっ!んんうっ!はあっ!瑞穂さん……んんう……うあぁ……ンンッ……」
やがて、身体の芯が熱くなるのを感じ、初実は初めてキスに酔い始めたのだ……。
瑞穂「はふぅ……ああ、初実……柔らかいわ……あなたの舌。もっと……もっと吸わせて……ちゅるるっ!」
初実「んっ……ぐぅっ!?……んぐっ、ごくン!んんーっ!」
瑞穂の舌が、初実の口腔内になお深く侵入してくる。
その舌はその豊富な唾液と共に、絶えず喉の奥に送り込まれてくるようだった。
初実「んっんぐっ……んっ!……んふっ……ちゅるっ!じゅぷっ……んああっ!」
瑞穂「はぁっ……じゅぷっちゅっ……んんっはぁぁ!いいのよ、先生のキスだと……思って……」
初実はそう囁かれ、脳裏に愛しい存在を思い浮かべた。
初実「うっ……んっ……ああ……はぁはぁ……んっ!」
すると途端に、初実の吐息に悩ましげな響きが混じり始め、初実の全身から力が抜けていった……。
瑞穂「んん……ふぁ……初実……ちゅちゅっ……う……」
初実「ああ、……んん、うれしいの……もっと……んむっ」
二人のキスから激しさが消え、ただ愛情を交し合う優しいものに変わっていった……。
瑞穂(ん……工藤さん……泣いてる……?)
瑞穂の頬に、初実の温かな涙が伝わった……。
それはきっと律子への想いの雫なのだろう……。
その輝きは、空の星に負けていない……と。瑞穂はそんなことを考えていた……。
………………
…………
……
瑞穂「どう?……ドキドキするの治まった?」
初実「え、ええ……なんとか……」
初実はキスを終えてから、かなりの時間をかけしゃべれるほどまで落ち着きを取り戻した……。
瑞穂「じゃあそろそろ病室に帰ったほうがいいよ。わたしも帰るから……終電なくなっちゃうし」
瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂初実「あ、あの……!瑞穂さんっ!」
初実が慌てて、背中を向けようとした瑞穂を引き止めた……。
瑞穂「わかってますよ、電話でしょう?ちゃんとするから心配しないで。……それよりも、明日の練習……忘れないでね」
瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂瑞穂初実「は、はい……お願いします……」
初実は一瞬、緊張した面持ちだったが、キスで少しは自信がついたのだろう……。
弱々しくも、微笑みながら答えてくれ