言われて初めて気づいた。 瞳から溢れる雫は頬を伝ってぽたぽたと落ちて、泣いているのだと自覚すると、さらにその量増して止まりそうにない。拭おうと腕を上げる前に優しい指がその涙を拭っていく。「…ごめん、このタイミングで言うことじゃなかったよね。嫌だったでしょう…」 「違う!!」間髪入れずに否定する。 思った以上に大きな声が出たことで天もびっくりしたのだろう、目を見開いてこちらを見ている。 差し出されたブーケに手を添える。「違うの、そうじゃなくて、すごく…嬉しくて…」 「陸…」 「天にぃ、本当に私でいいの?さっき天にぃが言ってたみたいに私達は籍は入れられないし、アイドルっていう職業をしている以上世間の目っていうのも気にしなくちゃいけない。子供が出来たからって無理することはないんだよ?産んでいいって言ってくれただけでも、私はすごく嬉しかったんだから…」私達の間にはたくさんの試練があって、どれも簡単に乗り越えられるようなものじゃない。 それでも結婚するっていうことはそれらに全部立ち向かっていかなければならないということ。それは生半可な気持ちでは絶対に乗り越えられない。 私は試すような気持ちで天にぃを見た。「陸、カーネーションの花言葉って知ってる?」 「花言葉?」何の脈絡もなく言いだした天に首を傾げながら聞き返す。