日菜からの紹介で私と丸山さんは交流を深めることとなった。同じ妹を持つもの同士、さらには同じ学校の同級生ということもあり、学校で会えば軽く会話する程度には。そうしてわかったことがある。 丸山さんは魅力的で明るい人だ。 それこそアイドルの鏡と言えるほどに。 誰にでも分け隔てなく接する姿や整った顔、可愛いふわふわのピンク髪につられてしまうほどの笑顔。 裏表なんて彼女にはないのかもしれない。いつもありのままの自分でいるように感じられた。 だからこそ惹かれたのかもしれない。 闇が光を欲すように。 心の内で醜さを抱えている私が、純粋で輝く丸山さんに惹かれるのは必然だったのだろう。 今まで恋なんて知らなかったし、知ろうともしなかった。そんなものはギターの頂点を目指す私にとって邪魔でしかなかったから。よくバンドの解散理由に色恋が取り上げられるものだから、ますます縁遠いものとなっていった。 だというのに、現状で私は恋を知ってしまった。してしまった。 学校で会えば自然と口角が上がるのを必死に抑えた。 話している最中、丸山さんの声に聞き惚れそうになるのを必死に耐えた。 真っ直ぐに満面の笑みを浮かべられては、自分の体温が異常なほど跳ね上がるのを感じながら、どうにか普段通りを演じた。 家で聞く日菜の話が丸山さんについてとなった瞬間、真剣に耳を傾ける自分自身に呆れもした。余りの変化に、日菜からは『彩ちゃんにおねーちゃん取られたなー』と言われてしまった。 辛うじてギターの、ひいては『Roselia』の練習には影響を及ぼしていないものの、このままではいけないとはわかっていた。 この恋を成就させるのか、諦めるのかを選ばなければいけない。 当然、諦めるしかない。 それが私の、そして正しい選択だ。 私は丸山さんが好き。だけど私は女で、丸山さんも女なのだ。 GL・百合・レズ・ガールズラブ・同性愛 呼ばれ方は様々だが、なんであれ世間の目は厳しい。同性愛が認められているところもあるが、ほんの少しだけだ。 それだけでもこの恋のハードルは上がるというのに、恋の障害はこれだけではない。 丸山さんは『アイドル』だ。そのアイドルにとっての天敵はスキャンダル。恋愛なんてマスコミの私腹を肥やす餌にしかならないし、そこに同性愛が加われば格好の餌だ。 私がこの恋を実らせようとして自分一人が傷つくなら何とも思わない。だけれど、それによって周りが被害を被る可能性がある。 だからこの恋は諦める。諦めるしかないものだから。