キッチンに寄せ付けないように。刃物は目の届かないところに。 食事は極力、サンドイッチやおにぎり。そんなメンバー達の献身的な配慮のおかげか、陸は少しづつ笑顔を取り戻していた。気分の良いときに鼻唄を歌えるくらい、少しずつ歌えるようにもなってきたみたいだった。頬の内出血も、唇のかさぶたも、すっかりきれいになった。そうした状況が、陸を焦らせていたようだった。天が訪れて、陸の部屋でベッドに並んで座っていると、陸は切羽詰まったような声を出した。「…元気になってきたから、早く仕事に戻りたいよ…」 「そうだね、でも…焦ることないよ?」 「でも…こんなに元気なのに」表面上はきちんと元気に生活ができてしまっているから尚更、自分だけ仕事に復帰できないことを気にしてしまうのか。でも天からしたら、それはとても心配だった。もちろん、メンバーだって今の陸が万全だとはとても思えないだろう。それでも、陸は周りを気にして負担に感じてしまう…「陸が元気になってきて、すごく嬉しいよ。けど、ボクも、きっと皆も陸のことが大切だから、心配なんだ。すぐに復帰というより…もう少しだけ様子をみよう?皆にも相談してみてさ…」 「うん……そうだね、ありがとう…」