とろんとした瞳の陸は、夢心地のような感覚でボクの目を見る。ボクの名を呼ぶ。今の陸は、ボクのことしか考えてない。ボクのことしか考えられない。 「……ごめんね。嬉しくて、つい。まさか陸から言ってくれるなんて思わなかったから」 「っ、そ、それって……」 「うん、ボクも陸のことが好きだ。ずっとずっと陸のことが、陸だけが好きだった。……陸も、ボクと同じ気持ちだったんだね」 ぎゅう、と陸を抱き締めれば陸の身体が大袈裟に震えた。それから懐くようにぐりぐりとボクの首元に顔を押し付けてくる。少し経ってから、また小さくしゃくりあげる音が聞こえた。──ああ、なんだ。最初から、我慢する必要なんてなかったんだ。 陸は万人に愛される。人に愛される才能がある。……なら、ボクは。 ボクには、陸を愛する才能がある。陸の心を悟って、陸が何を望んでいるか考えて、それを叶えて、陸を笑顔にしてやれる。 今までずっと陸のことだけを考えて、それだけを全てにして生きてきた。あいつよりも、誰よりもボクが一番陸のことを愛しているんだ。 ……大丈夫だよ、陸。もう絶対キミのことを離さない。もう遠慮することなんて無いんだ。 ボクには陸。陸にはボク。ふたりだけ。それ以外は、全部いらない。全部消してしまっていい。 陸をもう一度強く、つよく抱きしめて、嗤う。きっと陸には見せられないような笑みだろう。「……愛してるよ、ボクだけの陸」──もう絶対、キミを逃がさない。