そうダ。発動まで時間がかかるとわかれば、ソらは、あの忌々しい陣形を崩し、防御を捨て、死ぬ覚悟で突撃してくル……ッ! そして事実、そうなっタ!」 絡め、取られた。 一縷いちるの望みへ向かって皆、心を一つにした。 が、すべては敵のてのひらの上だったのだ。 陣形や隊列を崩す意図は、もちろんあっただろう。 けれどそれ以上に、(10分以内に破壊すれば”希望”はあると、信じ込ませて――) 欺きにより、より深い絶望へと叩き込みたかった。 綾香の目尻に、涙が滲む。 悪辣、すぎる。 あまりに、悪逆。 心を、踏みにじるために。 蹂躙、するために。(私、だ……私が敵の言葉を、よく考えもせず鵜呑みにしたばかりに……元を辿れば、私の呼びかけが元凶……ッ! だけど、こんなの……こんなのってッ!) オーガ兵の列が大きく広がり、包囲の形を取り始めた。 魔群帯の魔物たちも、防御を解いて突撃する神聖連合軍の背後を追っている。 と、魔帝器が、幾本もの紫光しこうの筋を辺りに煌めかせた。 まるで、プリズムのように。 ツヴァイクシードが、血刀を、再び大鎌の形に変化させる。 そろそろ収穫時期だとでも、言わんばかりに。「もう、遅イ……ッ! すべてが、遅イ! あとは――」 一瞬、世界が止まったような静寂が訪れた。「血祭りダ」 こうして、 すべては、「ぃギぇェぃェぇエえエぃィぃィんェぇェえエえエえエろロろロろロぃヒぃィぃィぃイいイいイいィぇィえエえエえエぃギぇェぃェぇエえエぃィぃィんェぇェえエえエえエろロろロろロぃヒぃィぃィぃイいイいイいィぇィえエえエえエぇェぇエえエげェぇエえエえガぁアあェぁアあアあ―――――――ッ!」 絶望という名のベールに、覆われる。 味方側は、まだ多くの者の認識が追いついていない。 宣言された刻まで時間はまだあったはず。 なのに、発動した。 一方、指揮官たちは次第に気づき始める。 謀たばかられたことに。 陣形を崩すのが、目的であったことに。 何よりも――弄ばれたことに。 敵の特性は、残虐さだけではない。 心理面や戦略面における効果的な策も、弄する……。「ば、馬鹿な……まだ時間はあった、はずなのに……」 脱力し、その場にへたり込む者もいる。 思わず、綾香は放心状態へ転じていく仲間たちの方に手を伸ばしていた。「みん、な――」「一騎打ちのさなか、そのような隙を見せるとハ――」「!」 しま、った。「言語、道断」 血の大鎌が、綾香の肉を、抉えぐり裂いた。「この絶望と希望の落差……これぞ、我らが求むる収穫であル」 そして、金棲魔群帯より―― 魔の勢力が、到来する。