「貴方に……貴方に何が分かるというのですかっ。何も知らないで、わたしがどんな気持ちで―――」 刹那、ルインの身体が雷にでも打たれたかのように、停止した。そして次の瞬間、その場に崩れおちてしまう。「はぁ……はぁ……」 唐突な出来事に、ゲオルは思わず顔をしかめた。 先程の戦いでルインはそこまで激しい動きはしていない。確かに後方での補助はしていたが、それも無理のない回復程度のもの。 別段、ゲオルはルインがやわだとか、そういうことを言いたいわけではない。 純粋に様子がおかしかったのだ。 いや、それ以外にも、今ゲオルは確かに奇妙な気配を感じた。 しかし、それを察したのはゲオルだけだったようである。「ど、どうしたルインっ。大丈夫か?」「ええ……大丈夫……です。気にしないでください」 心配そうにかけつけるユウヤに言葉を返しつつも、ルインの額には大量の汗が出ていた。「そんな声音で言ったところで何の説得力もないわ、阿呆が」「……っ」 ゲオルの言葉に、しかしルインは何も返さない。それだけで、相当きているのが分かった。 これには流石のゲオルも見かねてしまう。「……ここらで休憩だ。文句はないな、小僧」「も、勿論ですっ。ありがとうございます!!」「ふん。貴様に礼を言われる筋合いはないわ。喪服女、野営の準備だ。手伝え」「了解しましたわ」「お、おれも準備手伝いま……」「貴様はその似非聖女のことを見ていろ。その方がそれのためだ」