とあるオフの日のこと。 紹介したい人がいると天から急な連絡を受けた八乙女楽と十龍之介は、芸能記者たちが事務所に突撃してくる事態を想像して肝を冷やしたが、待ち合わせ場所の展望レストランのテーブルで天の隣に座っていたのは赤い髪をした少年だった。 二人の姿を見た少年は、慌てて立ちあがる。 「女連れてくるのかと思って焦ったじゃねーか」 「俺も内心ドキッとしたよ。その子は天の友達かい?」 長身の楽と龍之介に揃って見下ろされ、少年は威圧されたように背を仰け反らせた。 「ボクの双子の弟の陸だよ。二卵性だからあまり似ていないけどね」 勿論これは事前に用意していた嘘だったのだが、いざ口に出してみると自分でも真実だと錯覚してしまいそうなほど不思議と胸に馴染んだ。 「天は一人っ子のイメージだったけど弟がいたのか。しかも双子だなんて意外だなあ」 そう言って、年下の扱いに慣れている龍之介は柔和な笑顔で陸に会釈をした。 「はじめまして、陸くん」 シアトル滞在中に龍之介と楽の近くで撮影風景を見学していたので陸は二人を知っているが、当然ながら二人はそのことを知らず、これが初対面になる。 「はじめまして。くじょ……兄がいつもお世話になってます」 陸は二人に向かってぺこりとお辞儀をした。 「おう、よろしく」 次いで楽の表情が和らぐと、緊張の糸が解けた陸はようやく安堵の笑顔を見せた。