いくらスタジオ内とは言え、陸から目を離すような遊びをして、それで何かが起きたらどうするつもりなのだ。 事実、陸は脅えてしまっている。目を離したこの数十分で、何かが起きたのだ。 ごめんなさいと繰り返し謝る二人に、しかしそのことが余計に陸を脅えさせている様子から、天は二人にとにかく陸が落ち着ける場所を作ってくれと追い払い、再び陸に向き直った。 「なにがあったのか、にぃににお話できる?」 よしよしと優しく頭を撫でながら陸の顔を覗き込む。 その目には泣いた後も残っている。 辛うじて発作はまだ起きていないようだが、油断はできない。 「陸…」 「に…に…」 「うん」 「…れたの…」 「ん?」 陸の目を見つめながら様子を伺っていると、ようやく陸がその小さな口を開いた。 「りっくんね、かくれてたら…しらないひと、きて…」 「うん」 「でね…、あっちいこっていうの。りっくん、やだっていったけど、ひっぱられて…」 「…!!」 そこまで聞いて、天はある程度の事を察した。 誰かが、かくれんぼで隠れていた陸を見つけて、そのまま連れ去ったのだと。 一気に血の気が下がった。 思わず指先が恐怖で痺れる。 「りっくん、ここにかくれてなきゃっていったら、そしたら…」 それでも陸は、このスタジオから出ない約束を守ろうとしたらしい。 「あっちのへや、つれてかれて…そんで…」 その時の事を思いだしたのだろう。 陸の体が震えだした。 咄嗟に天は、辛いならもう思いださなくてもいいと陸に言い聞かせるが、陸は天の体にしがみついて首を横に振り、 「へんなとこ…いっぱいさわられて…そんで、りっくんいやで、ここまでにげてきて…」 「わかった。もういいよ、陸。もう大丈夫。怖かったね。ごめんね、ひとりにして。よく逃げてきたね。偉いね」 「りっくん…りっくん…、こわか…」 「うん、怖かったね。ごめんね?」 「に、に…、にぃにぃ!!!!」 ついに耐え切れなくなり泣き出した陸を、天は力いっぱい抱きしめる。 その胸の内は、先程とはくらべものならないほどの怒りに満ちていた。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない…!!