百が言い終わるのと同時に、ピアノの旋律が流れ出す。なにか足りない、わからないまま。憧れは遠すぎて見上げた空。きっと、きっと明日は目もくらむ。引き寄せられるように、オレたちは声を合わせた。 違うだれかと比べるよりも、いまここでやれることに挑戦しよう。ひとりじゃ難しいけど、みんながいれば。天は、目を閉じて想う。五線紙を飛び出したメッセージ、滲むほどまぶしい。勇気がわいてくる。「……とても、ステキな曲ですね」ナギが舞台上を見つめながら言う。とても、素敵だ。「九条氏も、とてもステキな顔です。……なくしたくない」 「……え?」 「ミツキ、ワタシ、九条氏と特別仲が良いわけではないです。……けれど、この気持ちは、なんなのですか?……胸が、痛いです」うっすらと涙の膜を張ったナギが三月のほうへ向いた。この気持ちの名は、なんと言う。「単純な答え。……悲しい」