呆ける悪魔は自身を捕らえていた火柱が消えていることに気づくのが遅れた。そしてその遅れが彼の、テンの侵入を許す。 フッと悪魔の背後に現れたテンはとても美しい笑みを浮かべ、口を開く。“とわのはこぶねにおはいりなさい”ポウッと淡い光が悪魔を包み込んだ瞬間、ギャっと短い悲鳴と共にシュルシュルと小さくなり一つの小さな銀の十字架になる。コロン、と手のひらに落ちたそれを見て目を細めたテンは永遠に眠れない、死ねない苦しみを味わうといいと微笑んだ。「おいおい・・・それはご法度じゃないのか?お前さんらに課せられたのは悪魔の討伐と喰われて魂となった者たちを天に送り返すことじゃ・・・」 「全てを討伐するまではここに保管するという名目があるから神も目を瞑ってる。いずれは同じように討伐して、魂を送る。だけどそれが今じゃないというだけの話。」先でも後でも結果が同じであれば構わないでしょう?と微笑を湛えるテンにヤマトは苦笑いを浮かべる。「これで七体目だしな、今更だろ。」 「そんなにいたのか!?」 「ほらここに。」チャラ、とガクの腰につけられたチェーンベルトには六つの十字架が並べられており、よく見れば一つ一つ形が違った。うわ、そんなのよくつけていられるなと引いたヤマトにガクはキョトンとした表情を浮かべて何言ってるんだ、これをつけているからこそリクを殺そうとした悪魔を忘れないんだろと言いのけた。「・・・俺は悪魔よりもお前らの方が怖い。」 「なんでだよ。大事なもん奪われそうになったら当然だろ。」 「悪魔に慈悲は必要ない。」あ、これは何を言ってもヤマトがおかしい扱いされるやつだと気づけばこれ以上言ったところで骨折り損だと諦めるように溜め息をつく。とりあえず結果はどうであれディエズを襲っていた悪魔はいなくなったのだ。