「いえいえ、こちらこそありがとうございます。子供たちは勿論職員も今日をとても楽しみにしていたんです。 素敵なライブ期待してますね。」一通り挨拶や本番の流れの説明を終えたとき僕はさり気なく施設長のもとへ行き話しかけた。「今日は宜しくお願い致します。TRIGGERの九条天です。」「あら、本当に綺麗ね、お人形さんみたい。テレビでよく拝見してますよ」「ありがとうございます。こちらの施設にはやはり病気を抱えた子が多いということで、 興奮すると危なくなる症状の子とかはいたりしますか? なるべく激しくなりすぎないようこちらも配慮をと思うのですが。たとえば喘息持ちの子とかいたりしますか。」「まぁ、お気遣いありがとう。そうね、喘息の子もいます。 でもライブ中は医師をしっかり待機させますから大丈夫ですよ。」「なるほどお医者さんが待機してくださっているならこちらも安心して公演ができます。」施設長との会話で喘息の子がいるという事実を聞けて可能性が0ではないことにホッとし、最後のここが当たりであって欲しいという願いが強まる。ライブは病院が終わる夕方から。今設営が始まったばかりでリハまでまだまだ時間がある。楽と龍と僕はそれまで施設内を歩いて回って陸がいないか一通り見て回ることにした。勿論そのままだと大混乱になるから変装をしてだけど。病院のすぐ隣ということもあってあの薬品の臭いが微かにしてくる。陸が嫌いな臭い。白い壁に薬品の臭い。もしここにいるのならあの子はどんな思いでここで暮らしているのだろう。そう考えただけで胸が締め付けられた。気持ちばかりが焦って、手がかりが少しでもないかと自ずと早足になる。あの子はここにいるのか、いないのか。答えが出るまであと少し。 おまけ→