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くま クマ 熊 ベアー 作者:くまなのだ~/くまなの
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62/211
60 クマさん、ジャガイモを手に入れる
寝ている3人を起こそうとしたら、
「みんなで庭で何をしているの?」
エレローラさんがやってきた。
「奥様、お帰りなさいませ」
「あら、3人とも気持ちよさそうに寝ているわね」
くまゆるたちを抱きしめて寝ている3人を微笑ましく見る。
「あのクマがユナちゃんの召喚獣?」
「黒い方がくまゆる。白い方がくまきゅうです」
「可愛い名前ね」
「触っても大丈夫?」
「危害を加えなければ大丈夫です」
エレローラはくまゆるに近づいて触る。
「温かくて肌触りがいいわね。これなら眠りたくなるわね」
3人の娘たちを見て微笑む。
「2人は何をしていたの?」
「わたしは、ユナさんと花壇を作っていました」
スリリナさんはわたしと作った花壇を見せる。
「ああ、こないだ言っていた花壇ね。これ一日で作ったの? 綺麗ね」
「はい、ユナさんの魔法が素晴らしく、わたしのイメージ通りに作ってくれました」
「そうなの? ユナちゃん、ありがとうね。何から何まで迷惑をかけるわね」
綺麗に出来上がった花壇とクマたちに囲まれて寝ている娘たちを見る。
「これは何かお礼をしないといけないわね」
「別にいいですよ。今日は助かりましたから」
「ああ、その件ね。あれからすぐに派遣しておいたから、数日には討伐されるから安心していいわよ」
「逃げたりしないんですか」
「大丈夫よ。襲ってきた盗賊を全員捕まえたんなら、アジトにいる盗賊たちは仲間が捕まったことに気づかないでしょう」
「でも、いつまでも戻ってこなければ」
「過去の経験から言えば、盗賊は襲ったあとは近くの村に行って酒や食い物を買っていくわ。だから、すぐにアジトには戻らない。だから、すぐに戻らなくてもおかしいとは思わないわ」
「その村って大丈夫なんですか」
「大丈夫よ。盗賊は村を襲わないから」
「どうしてですか?」
「犯罪者は王都、街には入れない。王都や街は犯罪経歴、犯罪者は調べることができる。唯一、調べていないのは村なのよ。そんな村まで襲ってしまったら、物を買う場所を失ってしまう。だから、盗賊は村は襲わない」
なるほど、盗賊たちにもルールがあるんだね。
「それじゃ、そろそろ、3人を起こしましょうか」
「お母様?」
眠そうな顔で母親を見る。
「おはよう。3人ともよく寝てたみたいね」
3人を起こし、くまゆるたちを仕舞うと3人は悲しそうな顔をした。
なぜに、フィナまで。
エレローラさんに盗賊の件も聞けたし、礼を言って屋敷を出ようとする。
「ユナちゃん、家はまだないでしょう。出来るまでうちにいていいのよ」
ああ、そうか。エレローラさんはクマハウスのことを知らないのか。
「大丈夫ですよ。小さいけど、家を建てましたから」
「冗談でしょう?」
「花壇を作るみたいに魔法でちょちょいと」
「花壇と家を一緒にしないで欲しいんだけど。そんなに簡単に家が作れちゃったら、大工さんの仕事が無くなっちゃうわよ」
笑いながらそんなことを言う。
翌日、クマハウスで目が覚める。
「ユナお姉ちゃん、いいの?」
「いいよ」
本日、フィナはノアとお出かけをする約束をしたそうだ。
「はい、これにお金が入っているから自由に使っていいよ」
先日、盗賊を捕らえた報酬から貰ったアイテム袋を渡す。
「2人でいろんなところに行くんでしょう。フィナのことだから、おごってもらうことなんてしないだろうし」
「でも」
「せっかくの王都なのよ。楽しまなくちゃ損よ。もし、フィナがお金のことを気にしているなら、これからも解体の仕事を頑張ってくれればいいよ」
わたしには解体は出来ないから、と心の中で呟く。
さて、フィナも出かけたことだし、わたしも王都見物に出かけることにする。
わたしを見る視線が気になるが、私服に着替える勇気がないのが本音だ。
魔法、スキル、召喚、全てがクマの服が無いと使えない恐怖がある。
もし、襲われたら、もし、危険なことが起きたらと思うと私服には着替えることはできない。
このクマの格好なら、襲われても危険なことがあっても対処は出来る。
フィナが危険なことがあってもすぐに駆けつけることが出来る。
だから、視線を我慢してクマの格好で都を歩くことにする。
まあ、ほとんど目は微笑ましそうに見てくる視線ばかりだ。
恥ずかしいのさえ我慢すればいいだけのこと。
王都を歩いていると広場に行き着いた。
ここは旅商人の露店が並んでいるのかな。
ちょっとした広場に地面に広げられた布の上にいろんな商品が並べられている。
それをゆっくりと見て行く。
「これは……」
「うん? 可愛い格好をした嬢ちゃん、いらっしゃい」
30代過ぎの男性が力ない言葉で言う。
「もしかして、ジャガイモ?」
そう、街でも見かけなかったジャガイモが売っている。
「そうだよ。嬢ちゃん、買って行くかい」
やっと出会えたジャガイモ。
だから、わたしは言った。
「全部ちょうだい」
「はい? 嬢ちゃん、いくら、ジャガイモが人気がない食べ物だからと言って、嬢ちゃんの持っているお金で全部は買えないぞ」
男性は少し怒り出した。
「いくらなの?」
「そうだな。これぐらいだ。払えるなら、全部売ってやる」
ぶっきらぼうに言う。でも、わたしの返答は。
「買った!」
「だから、……」
わたしは指定された金額よりも多く男性に払う。
「本当か」
出されたお金を見て男性は驚いたようにわたしを見る。
「買ってくれるのが嬉しいが本当にいいのか?」
「探していたのよ。ジャガイモ。蒸かしてもいいし、サラダポテトにしてもいいし、お菓子にポテトチップスや、フライドポテトを作ってもいいし」
「お嬢ちゃん、ジャガイモ食べたことがあるのか?」
「当たり前じゃない。こんなに美味しいもの。でも、今住んでいる街には売って無くて探していたのよ」
「そりゃ、当たり前だ。人気が無い食べ物だからな」
「なんで?」
「運が悪いと、吐き気やお腹が痛くなる」
「ああ、毒ね」
「知っているのか」
「ジャガイモの芽には毒があるからね。それさえ、食べなければ美味しい食べ物よ」
「……それは本当か?」
「何のこと?」
「芽のことだ」
「本当よ。毒があるのはジャガイモの芽。そんなことも知らないの?」
「お嬢ちゃんは学者様なのか。そんなことを知っている奴なんていないぞ」
そんな知識が無いからジャガイモが売ってないのか。
まあ、わたしだってキノコの種類とか分からないし、そんな感じなのかな。
「違うよ。わたしが生まれ育ったところでは常識だっただけよ」
「常識か。ジャガイモが普通に食べられるところか。良いところだな」
「でも、芽のことを教えればみんな食べてくれるじゃない?」
「ああ、でも、広めるのは大変だけど。でも、感謝する」
「役に立てて良かったよ。それと、おじさんの村の場所教えてくれない? 今度買いに行くから」
「それは嬉しいが遠いぞ」
紙を出して地図を描いてもらう。
もしかして、クリモニアの街の方が近い位置にあるのかな。
「大丈夫。クリモニアの街から近いみたいだから」
「お嬢ちゃん、クリモニアの街から来たのか?」
「これでも冒険者だからね」
「お嬢ちゃんが本当に買ってくれるならクリモニアの街まで運ぼうか?」
「いいの?」
「ああ、王都でも売れなかったからな。もし、買ってくれるなら、クリモニアの街の方が近いから俺も助かる」
「うん、買うよ。それじゃ、今度クリモニアの街に来たら孤児院に運んでもらえる? 話をしておくから」
「孤児院?」
「そこに知り合いがいるから。あと、これ前金ね」
先ほど払った金額と同じだけ渡す。
「いいのか。もし、俺が街に行かなかったら」
「そしたら、村に取立てに行くよ」
「冗談だ。ちゃんと持っていくよ」
「月に一度でいいよ」
「ああ、わかった。俺はザモール」
「わたしはユナ。一応冒険者をしている」
「それで、このジャガイモどうする? どこかに運ぶなら、手伝うが」
「いいよ。仕舞うから」
わたしは山積みになっているジャガイモをクマボックスに仕舞っていく。
これでスナック菓子のポテトチップスが作れる。
フライドポテトも楽しみだ。
「初めて見た。そんなに沢山はいるアイテム袋。お嬢ちゃん、何者なんだ?」
「冒険者だよ。でも、商業ギルドにも登録しているけどね」
露店に出ていたジャガイモが全てクマボックスに入る。
「他にもあるなら、買うけど」
「ジャガイモはこれ全部だ。他にも野菜を売っているがそれは売れている」
「その他の野菜?」
「ああ、俺と一緒にきた奴が他の場所で売っている。でも、その野菜はどこでも売っているから嬢ちゃんが気にするような物じゃない」
「まあ、露店の中で売ってて、目を引けば買うけどね」
「ああ、そうしてくれ。それで、俺はいつクリモニアの街に行けばいい?」
「誕生祭が終わるまで王都にいるつもりだから、そこから帰るにしても3週間過ぎになるから、2ヵ月後でいいかな」
ジャガイモがどれだけ減るか分からない。
「わかった。2ヵ月後に行く」
ジャガイモおじさんと別れて露店を見回りを続ける。
美味しそうな串焼きが買って食べて。
珍しい食べ物があれば買って食べて。
食材があればクマボックスに仕舞う。
見たことが無い食材があれば試しに一つ買い。美味しければ大量に買い込む。
全てを見回った分けじゃないけど、やっぱり、醤油、味噌、お米がない。
あと、川魚は見かけるが海魚を見かけない。
お寿司とか食べたい。
でも、お米がないと作れない。
なら、タコとイカでもいい。焼いて食べたい。
そもそも、近くに海があるのかな?
露店をゆっくり見回っていたら時間がかなり過ぎていた。
少し早いけど、帰ることにする。
そう、クマボックスに入っているジャガイモのために。
クマハウスに戻ると、さっそく、ジャガイモを薄くスライスして、油で揚げる。
パチパチといい音がしてカラッと揚がる。
お皿に乗せて塩をふりかける。
塩味のポテトチップスが完成する。
他の味付けが出来ないのが残念だけど、十分に美味しい。
「美味しい」
ああ、懐かしいポテトチップスの味。
ポリポリと食べているとフィナが帰ってくる。
「ただいま」
「お帰り」
「おじゃまします」
うん? ノアもいるみたいだ。
「どうしたの」
ポリポリ。
「ノアール様がクマさんのお家が見たいと言ったので」
「なにも無いけどゆっくりしていって」
ポリポリ。
「ユナさん。いったい何を食べているのですか」
「ポテトチップスよ」
ポリポリ。
「ぽてとちっぷす?」
ノアは首を傾げる。
「食べる?」
「はい、頂きます」
「わたしもいいですか」
二人の前にお皿を差し出す。
二人はポテトチップスを食べる。
ポリ…………
「美味しいです」
「はい、美味しいです」
「口に合って良かった」
「これはどうやって作るのですか」
「ジャガイモを薄切りにして油で揚げるだけだよ」
「じゃ、じゃがいも……」
ジャガイモって聞いた瞬間二人の手が止まる。
「ユナお姉ちゃん、ジャガイモを食べると病気になるんですよ」
二人がいきなり慌てだす。
「大丈夫よ。毒があるのは芽の部分だから本体は平気。緑色や紫色になっていたら危険だけど。普通のジャガイモは美味しい食べ物よ」
「そうなんですか?」
「ジャガイモを食べると病気になると教わったので」
「わたしも」
「まあ、芽や紫になっている部分は毒だからね。知らないとそう思うかもね」
わたしは二人が手が止まったポテトチップスが乗ったお皿に手を伸ばして食べ始める。
まあ、食べたく無いものを無理やり食べさせることはしない。
だから一人で食べる。
ポリポリ、
パリパリ、
ああ、美味しい。
コンソメ味とか食べたいな。
流石に再現はできないけど。
「ユナさん。本当に大丈夫なのですか」
「なにが?」
ポリポリ。
「その体の調子が悪くなったりとか」
「なるわけないじゃん」
ポリポリ。
「ユナお姉ち