ポケットからスマホを取り出して電話をかけ、それだけ叫ぶと龍之介はスマホを放り出し、男の衣服を探った。ポケットから手錠の鍵を見つけると駆け寄ってくる。 「天、支えて!」 龍之介が陸の背後にまわり、手錠の鍵を外す。天は倒れ込んできた陸を抱き留めた。ずっしりと重く、冷たかった。 「ここはダメ!空気が悪すぎる!」 天が訴えると龍之介は無言で頷き、陸を抱えて外に運び出した。地面に陸を仰向けに寝かせると、龍之介が陸の胸に耳を押し当てる。 天はそれを浅い息をしながら見守った。 龍之介が険しい顔で体を起こす。心臓が、動いていないのだ。天は悲鳴を上げた。 「いや……!」 「天……」 「嫌!嫌だ!りく!」 そんなはずない。受け入れられない。否定すれば現実にならないとでもいうように、天は全身で起きていることを拒絶した。 「天!」 陸の体に縋りつく天に、龍之介が聞いたことがない厳しい声で怒鳴った。 「しっかりしろ!恐怖に逃げ込むな!」 殴られたような衝撃が走った。龍之介が真剣な眼で天を見すえる。 「陸くんは必ず助かる。力を貸してくれ」 天は息を飲みこんだ。パニックに逃げ込めば適切な対処ができず、助かるものも助けられない。龍之介は酷なことを言っているとわかった上で、あえて言ったのだ。